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ドルチェ × ドルチ
番外 結婚記念日 後編/+20/兄視点
居間、と表現した方が良いのか、珍しく家族4人が揃って一部屋で寛いでいると、そろそろ日付が変わる頃合い。
桜弥は時計を気にしているのか、そわそわし出すし、両親は時間なんて微塵も気にする気配すら見せない。
気付かせないだけで、実は気にしているのかもしれないけれども。

「パパン、ママン。結婚記念日、おめでとうございますっ!」

そわそわしていた桜弥が嬉しそうに2人に声を掛けたところで、時計が12時を示したのだと漸く気付いた。
背中に隠していた小さな包みを渡せば、父親は嬉しそうに桜弥の頭を撫でる。

「有難う御座います。開けても良いですか?」
「はいっ。ママンとお揃いにしました!」

にこにこ。
桜弥の言葉にいち早く反応したのは母親で、自分の包みを手早く開くと笑みを見せる。
母親が父親をこの上なく好いているのは周知の事実だけれど、人並み以上に僕ら兄妹も愛されてると思えるのは、こうやって滅多に見せない笑みを見せてくれるからで。

「ありがと、桜弥」

嬉しそうに小さく笑む母親に、そんな可愛い表情を間近で見せられて堪えていられるわけもない父親は。

「か…ッかわいいです恭弥ぁ!」

恥なんて感じることなく、外観なんて気にするわけがなく。寧ろ、躊躇わずに母親をぎゅっと抱きしめる。
それを見たボスは以前、「子供の前なんだから、少しは自重しろ!」なんて言っていたけれど、僕も桜弥も気にするタイプでは無いし、仲睦まじい両親を見ているのはそれなりに楽しい。

「2人とも今日は休みだからゆっくりしたら?」

僕から、とケーキが入った箱を手渡しながら言えば、きょとんとした母親。
明日が休みだと言う事はボスからは言われているだろうに、と思ったけれど、母親は財団の仕事まで休みだとは思わなかったんだろう。
幼い仕草で驚く母親の横では、父親が箱をそっと開けてケーキを見ている。
中に入っているのがドボシュ・トルテだと判ると少しだけ眉を下げて、けれどにこりと笑って礼を言ってくる。
以前に食べたいとか言っていた気がして居たのだけれど、間違ったか、と思って声を掛ければ、「違うんです」と小さく頭を降られて。

「ドボシュだと、生クリームプレイが出来無いでしょう…?」

親にあるまじき発言に思わず愛用の武器を構える。
桜弥はどう反応したんだろう、と目をやれば、母親と仲良くプレゼントの話でもしているらしくて気付いていない。
聞こえているはずの母親は、特に咎める素振りさえ見せないのだから、困ったもので。

「あぁ、そう、判ったよ…後でデビルズフードケーキ、作るからそんなに残念そうな顔しないでくれない…?」

息子になんてこと言わせるんだ、と思わなくは無い。
あぁでも、こんなに仲の良い両親だから僕や桜弥が生まれたんだろうけれど。
さて、宵も更けるばかりなのだからそろそろ両親を2人きりにさせてあげよう、そんな気持ちで桜弥へと声を掛ければ桜弥も判ったようで、立ち上がってスカートのプリーツを直す。
桜弥のスクールバッグと、自分のボストンバッグを左右の手に持ってそれじゃあ、と部屋を出ようとすれば、父親が慌てて声を掛けてくる。

「何って、折角の結婚記念日なんだから、2人きりでゆっくりしなよ。夕食までには戻るからさ」
「らぶらぶして下さいねー」

兄妹そろって部屋をでて行けば、少し困った様な父親の声の後に嬉しそうに甘え出す母親の声が聞こえる。
久し振りに結婚前みたいに2人きりになるんだ、それくらいはなると判らない程あの2人の子供はやってない。
財団とボンゴレアジトを区切る扉を潜って暫くしたところで、桜弥が僕にしゃがむように促す。
何かあるのかと少しだけ腰を落としてみれば、内緒話するみたいに耳元にこそっと小さな声が吹き込まれた。

「ねぇおにいちゃん。来年辺りに、弟か妹、できたりしますかね?」
「さぁね。…でもまぁ、出来ても可笑しくないと思うな」

それは今日1日のあの2人次第なんだけど。
何はともあれ、両親が何時までも仲が良い事は何よりだと、僕は相変わらず思うのだった。

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兄が成人前、
妹が中学生の頃のお話

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