夕暮れ時、西の空からオレンジ色の太陽が、真っ白な空間を蜂蜜色に染め上げていた。
病院に、来ていた。
偏頭痛持ちの私は、ことごとく通院を余儀なくされていて、これはもう日課になっていた。
左目だけが正常な私は、右目を真っ白な眼帯で覆うと、シンプルめな黒のロングTシャツにショートパンツを合わせて、真っ白なポンチョを着ていたら、すっかり顔見知りの看護婦さんに褒められて、ズキズキと止まらない頭痛に吐き気を覚えながらも、ありがとうございますと返事をしておいた。
明王が心配していた。無論、至極当然かもしれない。
キスのせいで脳に酸素がまわらないのが原因だったわけだから、もうしばらくはしてこないだろうな。
蜂蜜色の壁をぼんやりと見つめる。
頭痛はますますひどくなっていて、今にも倒れそうだった。
「相模さん、相模藍さん」
何度か目に呼ばれて、ハッと我に返り、立ち上がる。
そのせいか、私の世界が反転した。
「きゃ、ッ」
「おっと!」
誰かに、支えてもらえたみたいだ。
予想していた体全体の痛みなどひとつもなく、きつく瞑った目をソロリ、と開けた。
「あ…大丈夫ですか?」
「あ、りがとう…ございます」
「いやいや、無事なら良いんですよ、気にしないで」
病院の寝巻きを着ていた。ココで入院してるんだ…よく見ると左手には点滴がついていて、右手だけで受け止められたらしい。
「あ、ホラ、呼ばれてますよ」
「あッ …あの、ちょっと待っててください!」
「え?」
「お礼、したいんで!」
脳がまだ正常に作動していないのが良かったのか、この瞬間はあの耐え難い痛みのことなど忘れていた。
いかなる状況下でも平常心であれ
(クスリよりも効くみたい、)
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