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お気に入りの人形をとられた子供のように










「…藍ちゃん、」


「……ナニ、」


「…よけてくんねぇ?」


「ヤダ」


「…じゃぁせめて困らせないでくんねェ?」



本当、慣れてねェから、何してあげたらいいかわかんねぇし?

縋り付く、私の支えは私を見ていない。
不運な私は偽りの愛だとわかっていて、理解しようとしない。…いや、偽りなんかじゃない、お父様は…



「…ナニ、寂しいワケ?」


「…寂しい?」


「寂しいんじゃねぇの?
今、藍ちゃんのおとーさまは、キドウユウトに夢中なわけだし」


「…そうかも、しれない」



嫉妬?親子なのに?
愛?違う、もっと、近くて、遠いもの。

お気に入りの人形を渡したくない子供のように、私は駄々をこねている。


明王の体温はとても低く感じて、大きな猫目が困惑した表情で私を射抜いていた。
いつも余裕な表情の明王にしては、珍しい。
とまらない涙を、お父様に似ていたその手で、掬われる。



「…私には、お父様しか、影山総帥しかいないの」


「…、」


「私を愛してくれている唯一の、」


「…あのさぁ、藍ちゃん?」


「…え?」


「…俺も、いるぜ?」


「…あき、おがいる、って?」



ストンと、ソファに置かれ、その隣に明王も座る。かと思ったらすぐさま、大きな猫目がズイ、と近づいてきた。



「俺、お前のこと、愛してるぜ?」


「…あき、っん、」



切なげな、そうでないような表情
これもはじめてみたな。

形の良い唇が私の言葉を塞いでしまって、慣れていない私は抵抗する術を知らなかったけど、
明王の体温がとっても心地良くて、ソファに体重を任せてしまった。










   (もう、離れなくちゃいけないのに、余計別れが辛い)











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