…昔と同じ、綺麗な髪、瞳、色素の薄くまるで死人のような、手。暖かみを感じる、夢でも幻覚でもない彼は私の、
「…藍、」
「ヒ、ロ…ト……なんでこんなところで……」
「俺も雷門を監視してるからさ」
「監視…!?」
「久しぶり藍、すっごく、キレイになったね」
昔のように頭をフワリと撫でられ、その手が私の頬を伝い私の頬に彼の唇が当たる。
チュ、というリップ音のあとに彼はまた、私を抱きしめた。
私は困惑していた。どうして彼が今頃、私の目の前に、どうして彼は今、雷門の監視をそしてなにより彼は私の、
「おひさま園にいた半年の頃も注目の的だったよね。風介も春矢も、リュウジも、レイナも、みんな元気だよ」
「……、」
「あれ、疑ってる?大丈夫俺、今は@浮フ味方だよ」
キレイに髪、伸びたねえ
細いねえ、昔と変わらないねえ、キレイだねえ
細い指が私の長い髪に分け入って、ゆっくりと毛先まで梳かれる。あまりにも優しい手つきにまるでおひさま園、私が少しの間だけいた孤児院の頃を思い出して自然と目を閉じる。
ヒロトは、その孤児院にいた半年だけ兄弟だった
私の、初恋のヒト。
「…さてと、藍。久々に鬼ごっこしよっか」
「……おにごっこ…?」
「おひさま園でもやってたよね」
そう言うとヒロトはふわりと微笑んだ。昔のヒロトと変わらない、けど、何処からか満ちてくる余裕と不適さが、金の瞳にうつる。
ただ彼は私の瞳をまっすぐに射抜いてるだけで、その目からは何故だか何も読み取れない。自身と余裕と、懐かしさ。冷静沈着な性格になったのだろう、今のヒロトは昔と何ら変わらないのに、昔のヒロトとは似ても似つかぬ雰囲気を手に入れていた。
「まずが俺が鬼、でももう藍を見つけた。今度は藍が鬼だよ」
「……ヒロト、」
「まあ、その死んだ目に、俺が見つけ出せるかわかんないけど、ね」
死んだ、目。そう言った時、一瞬だけ負の感情を感じてビクリと肩を揺らした。その感情には私に対する嫌悪すら感じて、私自身を否定されているような、言葉の重みに何も言えない。
「…君が俺を見つけたときには、その目が戻ってると良いけど、ね」
そういい残して、彼は私に背を向ける。
あ、とか何とか、何とも情けない声が反射的に出て、更にまた反射的に私は彼の腕を掴もうと手を伸ばす。
けど、ヒロトは黒い闇に吸い込まれるようにして私の前から、まるで今まで居なかったんじゃないかと感じるくらい、跡形もなく消えていた。
「…私が死んでる、って…何…?」
死んでいるというのは、ヒロトが嫌悪した私とは、この金の瞳のことだろうか、否、そうであれば私は…
わからないまま、私はただ冷たい風を握り締める。
冷たい皮手袋がキュルルと耳に障る音を発して、それすら私には遠くで起きたことのように聞こえた。
「……藍、?」
風丸が私に気付いていたのも知らず。
鉛色の空に
私には何が残っているんだろう
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