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予期せぬ再会に











……




また再び京都に降り立つ。愛知と京都は近くは無い。けれど私はどちらかにずっと留まっていることは出来ない。
風丸だけのことを考えれば、佐久間が風丸に危害を加えようとすればすぐに止めに入れるからずっと京都に居た方が良い様に思えるけど、私は佐久間もダイジで、佐久間の近くに居たい。

ほとんど寝ずに日帰りして、また往復を繰り替えす。
それが何日目か続いた今日、雷門はまだ漫遊寺に留まっていた。私が抜けてから一週間と少しだ。何故何処にも出発しようとせずに京都に留まっているのかはきっと、宇宙人の情報が掴めず出るに出られないのと



『…藍が、帰ってくるかも知れないんです、監督』




…風丸、だろう。私が帰ってきたときに、雷門が何処にいるかわからなくなってはいけないと、風丸と鬼道も、チームのみんなと監督に頭を下げていることを私は知っている。
知っているんだ、なのに私は、あの大好きな空色の美しい髪が小さく震え揺れているのを何度も見ているのに、声をかけることはなかった。




「(…だって、戻れなくなっちゃうじゃない…)」



言い訳だってわかっているけど、今の私にそんな勇気なんて無くて、まだ我慢して、自分の想いを殺すほうがまだマシなのだ。


漫遊寺の校舎、中心にあるサッカーグラウンドを一望できる高台から皆を見下ろす。漫遊寺のみんなと練習試合を繰り返す雷門のみんな
意思が感じられる。私の中にあったのに、冷えてどこかにいってしまった意思を。
みんなサッカーが大好きだから、サッカーを、世界を守ろうとしてる。
でも、でも私は



「…お父様とサッカーなんて、選べないよ…」





「おとうさま≠チて誰?」


「ッッ、!?」


「おとうさま≠チて言うのは、藍の今の父さんのことかなあ?」




突然、聞こえた声と同時に現れた気配に反射的に私はその場を飛びのく。視界の端に紅い糸がちらついて、私は後ろをゆっくり振り向いた。



「…………ヒロ、ト……?」



…10年に近い月日以来に出会った彼は、昔のように美しい瞳を細めて、私を抱きしめた。



「……会いたかったよ、藍」









予期せぬ再会に溺れる
そして私から酸素を奪う







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