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私達は花じゃないけど









…昨日の胸騒ぎで、私は佐久間の傍になるべく居る様心掛けた。狂ったようにサッカーをしている時以外、私はずっと佐久間の傍に。
佐久間も我が物顔で私の部屋のソファーを陣取って寝泊りしているし、そのほうが私も好都合なので何も言わない。




「佐久間がすまないな」


「…こうじろ、」



いつの間にそんな傷をつけたのか、右目から頬にかけて大きく裂かれたような傷口が、幸次郎の綺麗な顔にうっすらと残っていた。

その頬の傷を見て私が顔をしかめているのがわかったのか、幸次郎はいつものよに微笑みはしないものの、私の目線を逸らそうと綺麗な指を振り上げる。



「あいつ、部屋で寝てるのか?」


「うん、そっとしておいてあげて
私は出かけるから、佐久間のことよろしく、幸次郎」


「練習には出ないのか」


「…不動だって出てないわ」


「……」



そのまま幸次郎は何も言わなかったので、私はヘラリと彼に笑いかけてから再び歩みを進める。自分のアシンメトリーな揉上部分のグレイの髪が視界の端にチラついた。



「忘れられないのか」


「……、」


「藍、お前は何がしたいんだ、佐久間なのか、それとも、…」



冷たい廊下に美しい凛とした声が木霊して、私はまた自然と歩みをとめてしまう。
佐久間も幸次郎も大好きだ、私の初めてのお友達。



「……二人のことは大好きだけど、これは」


「…」


「…自分でもわからないけど、頭から離れない人がいるんだ」


「…風丸か」


「…さて、ね」



幸次郎の瞳が囁く。
藍は俺たちを裏切りはしないけど、いつか俺たちを離れてしまうんじゃないか、という恐怖と不安のココロ。



「…でも私、練習に出て無くても何でも、私は真帝国の生徒だし、幸次郎と佐久間のトモダチだよ」


「…トモダチ、か」



鈍い輝きに呑み込まれた瞳の奥に、私を助けてくれたときのように眩しいくらいの瞳の輝きが一瞬、幸次郎に戻った気がして
私も思わず忘れていた笑みを思い出して、幸次郎にあの時以来の笑顔を見せられた気がした。









私達は花じゃないけど
水をあげると再び命を燃やすの







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