………
「…藍、」
「すみませ、ん…お父様…足止め、出来ませんでした…」
「……いや、十分だ、ご苦労藍」
「……お父様…」
高くひとつに纏められた私の髪を、お父様はスルリと解いた。
サラサラと肩に滑り落ちてくる髪、アノ人が…アノ人が…キレイだと言った、私の髪
「何を泣いている、藍」
「…泣いて、ません…」
どうして、どうして…
どうして涙が止まらないの、どうして…
「俺に連絡も寄越さないで、良いご身分だなァ藍ちゃん?」
「……あきお」
「んまぁ、影山さんが良いって言うんなら、もう新帝国で試合に備えろって言ってるんだろうし」
暗い色の制服の上で鈍く怪しげに輝く紫色のソレは、色素の薄い明王の肌をいっそう薄く引き立たせていて、私にはそれさえも虚ろに見えた。
明王の後ろに鎮座する、同じ制服を身に纏った、おそらく新帝国のメンバーであろう奴等の中から一人、奇抜な髪型の女の子が私に同じ制服を渡して、私と同じ虚ろな瞳で私を射抜く。
「私、小鳥遊忍」
「たかなし…しのぶ?」
「貴方と私しかいないのよね、女の子」
同じように首に掛けられた紫色
鎮座するメンバーの中に佐久間と幸次郎を見つけたときまた、涙が頬を伝った
「…泣くことはないわ、私がいるよ、藍」
「……、」
今日、私は私じゃなくなる
私は私を殺してワタシになる
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