「んん、ふ…や、め…ッ」
抵抗できないよう、束ねられ手首を掴まれ、壁に押し付けられた。追い詰められていた壁を利用されて、彼は今度は私の足に自身の体を乗せて、抵抗を妨げた。
長い長い、キスと呼ぶには荒々しくて、それでいて不慣れで、ただ存在を求めているような、そんなキス。
酸素を欲しがる私の脳内は無意識にも息を吐き出すため口を開く。
そこに間髪入れず風丸の舌が侵入してきて、またしても酸素を奪われてしまった。
「や、め…ぅぁ、」
「…やめられるならとっくにやめてるさ、」
「ッッかぜま、る…」
「俺だっておかしいってわかってる、こんなことしちゃ、いけないのも…」
「っきゃ、」
「でも、藍」
お前が欲しい
何処かで聞いたような、台詞に聞こえた。
彼の瞳はただただ、溢れる欲望に耐えていて、つらそうに、眉間に皺を寄せるだけ。
軽く押されただけで床に倒れこんだ私を見下ろす風丸、いつも見えていない左目があらわになっていて、その目が私を呼んでいた。
「…馬鹿じゃないのか、恋愛ごっこする気、ないとか…」
「っやめ…ッ、」
「じゃぁ俺に、遊びでもあんなことするなよ…」
「ん、んん…っ」
「…おまえ自身、こうなるのを望んでたんじゃなくて?」
「、っあ」
風丸の、普段より数段低い声が鼓膜を刺激する。首筋に唇を這わされて、出そうになった声をかみ殺した。
「…ッやめ、て…!!」
「…俺、お前のこと、…」
「っっ、」
言わないで、欲しかった
「好きなんだよ…藍、っ」
「…っ言わないで、ッ」
「お前がどう思っていようと…鬼道と、」
「っっ、」
「鬼道と…何があっても、俺は…嘘を付けなかった…」
髪を撫でる、優しい手。
開放された手をゆっくり、風丸の首に回した。
引っ張られる風丸の首元に顔を埋めると彼は、驚いたようで、小さくぴくりと肩が跳ねた。
「…私、すぐに消えちゃうの…」
「…消える、って…?」
「…ここから、いなくなるの…だから」
特別な感情なんていらない、そう思ってたのに
「…私は、…離れたくない存在を作っちゃ、いけないの…ッ」
「…藍、」
「……っ私だって…ッ」
言う前に、伝わったのか、
また風丸は、唇を重ねてきた。
今度は驚くほど優しくて、あったかくて、
「…ん、む」
求めてしまった、私の罪
…好き、
(駄目なのに、この温もりから離れたくない)
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