…正直、まだ、疼いていた。
なんでだろう、近くにはもう、エイリア石はないのに。
風丸が椅子からベッドの上に移動してくれて大分触りやすくなった髪。なんかもう、みつあみしたり、流したり梳いたり、お互いめちゃくちゃに触りあっていて、人に触られるのって気持ち良いからやめて欲しくなくて、ずっと黙ってたけど、限界みたいだ。
「風丸、」
「ん?」
「…顔洗いたいんだけど、連れてってくれない?」
「わかった、」
するりと離れた風丸の手。私よりずっと大きい、やっぱり男の子な手を差し出されて、ふらつきながらも彼の手をとって洗面所に向かう。
目が、熱い。
冷やしてどうなる、とかではないけど、少しはよくなると思う。
「…あの、風丸…外で待っててくれない?」
「あ、ああ…わかった」
「…ごめん、」
女の子は見られたくないのかな、
そう伝わってきた風丸のココロに対してごめんと呟いて、冷たい蛇口を捻った。
はりつくサイドの髪。
久々に見る両目での景色はやはり、片目の時よりもずっと視界が見渡せた。大きな鏡、3つ4つほどある洗面台に対して、大きな鏡が一枚、シックな黒と白で統一されたこの空間に、私のオッドアイが異様な存在感があった。
私は、何をしてるんだろう。
何をしにココに来たんだ、足止めでしょう、時間稼ぎでしょう。
お父様のためにここにいるのに、すっかり馴染んで、皆の優しさにすがって、馬鹿みたいだって、わかってるのに。
自分の目を覗く、後悔、裏切りを拒絶する想い、愛、
「……藍、?」
「っ!! っあ、」
「…その瞳…」
「っ来ないで!! 見ないで!!!」
「ッ!?」
「、ぁ…」
…見られた、金色に怪しく輝く、右目。
目を合わせられなくて、一歩一歩距離を縮めてくる風丸から後退しながら、うろうろと彼の揺れるテールに視線を泳がせる。
眼帯は洗面台の上。もう取りには戻れない。
「ッッや、め!!」
「なんで逃げるんだ!!」
「ッッ、」
「…俺の目を見ろ」
「ッやだ!!」
「どうして?」
「っ……」
「…目、開いて、何もしないから…」
「…ッ」
風丸の手が、私のサイドの髪をかきあげる。あらわになる右目。目尻を親指の腹でそっと撫でられて、思わず目を開けてしまう。
「…か、かぜま…ッ」
「…金色…」
「み、ないで…」
「…どうして?」
「だ、って…おかしいでしょ、」
「何がだ?」
「…め、の色…違うから…、」
目を、あわせられない。けど、閉じることも出来ない。
風丸の目線が突き刺さるのを感じる。
私の背後はもう壁、逃げ道である左右には風丸の腕があって、自力で歩けない私は逃げる術ももうない。
「…私は、この瞳をみられちゃ、いけないの…」
何もかも、見透かされる気がして、
今だけは私を見つめないで
(嫌われたくないの、怖がられたくないの)
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