出逢った瞬間、
あの人に会った瞬間、
いや、違う
あの人に対するあいつの幸せそうな笑顔を見た瞬間、
叶わないと思った
俺のことなんて視界にすらないんだろうけど
わかっていて、諦められない俺はなんて…
出逢った瞬間、
「佐久間は、好きなやつとかいないのか?」
「…っはあ!?」
突然投げ掛けた質問を聞いた佐久間は、飲んでいたイチゴミルクを吹き出しそうな勢いで俺を見た。
「なっんでそんなこと…!」
「いや、いるのかなぁって気になって」
ああ、これは
明らかに頬を赤らめて、大げさに返事を返す彼女すら綺麗だと思う。
「……好き、とかじゃなくて…尊敬してる人なら、いる…」
「そういうの好きって言うんじゃないのか?」
「入学早々5人斬りしてる奴に言われたくねーよ」
「なんで知ってるんだ?」
「…同じクラスの奴等だからだよ」
「……そうか」
佐久間は女なのに、女といるのを拒む。なにやら、色恋に敏感で乙女な話がわからないらしい。だからこそこうやって、俺は佐久間と屋上で昼飯を共に出来ているのだが。
「誰、それ?」
「なんでお前に言わなくちゃいけねーんだよ」
「気になるから」
「………、」
諦めたように溜め息を吐いた佐久間は、綺麗にイチゴミルクのパックを畳ながら俺に告げる。
「部活の時、俺のこと見てればわかるんじゃね?」
「え…」
「俺が慕ってる方なんて1人しかいねーし」
また意地悪く、彼女はニヤリと笑う。綺麗な彼女に手を伸ばしかけて、寸でで理性が俺を抑える。
部活の時、あいつが頬を赤らめながら、今まで見たことがないような笑顔で話しかけているのを見て
相手が誰だろうと
相手が佐久間のことをどう思っていようと
勝ち目がない気がして、胸が酷く軋み始める
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