澄んだ声に、
彼女と出会ったのは、中等部の入学式二日後だったかな。クラスも違くて、初等部の頃は名前を知っていた程度。
出会ったのは、長い長い螺旋階段の途中。
まさかこの出会いがこんなことになるなんて、お互い思いもしなくて、
澄んだ声に、
「……っと、大丈夫か?」
「あ、あぁ…ビックリしたぁ…」
「足滑らせたんか?」
「いや、ちょっと人を探してて…」
落ちそうになったのを助けた彼女は、深呼吸しながら乱れた髪を整える。色素の限りなく薄い、銀に近い幻想的な色の髪は、スルスルと彼女の指から離れていく。ふい、と目があって、彼女の飴色の瞳に絡めとられた。
「…ありがとう、ございます」
「いやいや…てかあんた、一年だろ?俺も一年だから敬語じゃなくて良いだろ」
「えッ一年!? でっか…」
「老け顔とか言うなよ」
何言ってんだよ、とクスクス、彼女は笑う。反射する光に当てられて、思わず息を飲んだ。肩に掛けられたスクールバッグと一緒にスパイクを持っているのを見て、ハッとした。
「あれ、もしかしてサッカー部希望?!」
「え? あぁ…なんだお前もか」
「なら話は早いな!!俺、源田幸次郎!!GK」
「……佐久間次郎、FWだ」
「女がFWかぁ…珍しいな」
「女だからってナメんな、ばーか」
隣を歩く彼女は意地悪く笑いながら、階段を上りきる。
ドクン、と
心臓が跳ねた
「帝国学園は競争率高いよなー、あんたレギュラーとれんの?」
「……ナメるなよ。同じフィールドに立てると良いな」
「ああ、」
眼帯で隠されていない左目は、隠された右目の分だけ俺を絡めとる。
「…佐久間、」
「早速呼び捨てかよ。…まぁそっちのが良いけど、なんだよ」
「……綺麗だな、お前」
「な…ッ」
この時にもう、佐久間の実力は十分に見せてもらえたのだけれど。一年にして、レギュラーとして同じフィールドに立った俺を魅了するプレイにまた鳥肌が立ったのは、もう少し後の話だ。
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