Cherry blossom
においたつさよなら
桜の木には妖精が守っていて
愛してくれない者が触れると消えてしまうとか
妖精の感情によって桜はより美しく、より甘美な薫りを引き立たせる
はらはらと舞う花弁を見る度、彼は悲しそうに俯いて、透き通ったキャラメル色の瞳を伏せる。好きだよって囁けば、美しく微笑むけど…
何で?
消えるなんて言わないで…
チェリーブロッサム
「桜、もう散っちゃうな〜」
「…あぁ、」
「…、悲しいのか?」
「…まぁな…」
風丸に呼応するように、桜もはらはら力なく落ちてくる。きゅっと手を握れば、彼は今にも泣き出しそうな顔で、俺を見てきた。
「…円、堂」
「……ん、?」
「…俺、お前のこと…好きだよ…?」
「…わかってる、よ?」
「円堂…俺、俺ね…」
お前とお別れしなくちゃいけない
彼の整った唇は、そう言葉を紡ぐ。
え?なんで?好きなのに?理由は?どこか行くの?
「俺……もう消えちゃうんだ」
「な、にを…風丸ッ?!」
「俺…本当はお前を好きになっちゃいけなかったんだ…」
はらはらと花弁が散る
風丸の瞳からもはらはらと、涙が零れた
頭が混乱して、冷静さを奪っていく。花びらが俺の思考を奪っていって、きつくきつく、風丸の手を握った。
「お別れ…だ」
「嫌だ…なんで、いきなり…っ」
「…来年、会おう?」
「なん…っん、」
最後の最後に触れた唇は、確かに暖かかったんだ。そして、彼ははらはらと形を無くしながら、涙をはらはらと零しながら、言った。
「…俺、この木なんだ
だから…お前に恋しちゃいけなかったけど……れは……………とすき……から、」
握りしめていたのは、ひとつの花弁
また、会える…よな?
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