Cherry blossom
天上の花冷え
あの日から、毎日毎日飽きもせずに彼に会いに行く。他愛のない話も、彼はこの降り注ぐ花びらに呼応するかのように…いや、彼がクスクスと笑うと、それに呼応するかのように降り注ぐ花弁。現実にいるのか分からなくなる。君に会って別れる度、辛くなる。君に会いたい。君を知りたい、のに…
――――なぁ、君は…誰?
チェリーブロッサム
「なぁ、風丸は何処に住んでるんだ?」
「んー…内緒」
「ここの生徒?何年生?」
「円堂は質問が多いな…」
困ったようにまた笑えば、美しい桜もはらはらと揺れる。高い位置で結ばれたふわりとした長い髪はどこか神秘的で、触れてみたいな…なんて欲が走る。
「…触れたいか?」
「え…っ?」
「…円堂は…俺のこと、好き?」
「な…んで、?」
なんでそんなこと聞くんだよ、?
こんなにも近いのに、何か遠く感じる彼の表情は、俺が愛しくて愛しくて堪らないような。こぼれ落ちそうな瞳に自分が映るのを見て、自然と手が彼の頬に当てられる。
「俺は…好きだよ?
円堂のこと、」
「…俺、も」
周りから鈍い鈍いと言われ続ければ、嫌でも自分は鈍いのだな、なんて思うけれど。
あぁ、そうか。
胸を締め付けるこの痛みは、
触れたいと願う欲情は、
君の笑顔を見たときの喜びは、
君に会った時から俺は君のこと
「…風丸のこと、好き」
そう呟いたら、彼は今までにない位に笑顔を溢した。初めて触れた頬は、触れあった唇は何故か、桜の香りがして…
何故かいとおしくて、桜色の唇をペロリと舐めた。
「…やっと触れた」
「……好き、円堂」
幸せだよな?
なのになんで君は、泣き出しそうなの…?
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