Cherry blossom
ふれられない花びら
透き通るような声で
その姿は、はらりはらりと舞う花びらのようで
君に出会った日から今日にかけては、何かの夢だったんだよな…?
でも確かに、確かに…―――――
チェリーブロッサム
体育館裏には、毎年美しい花をつける桜並木がある。どこの桜よりも美しくて、どこか儚げで。俺は理由もなく、桜の木の下でじっと、はらはらと風によって降ってくる花びらの雨を受けるのが好きだった。
「……桜、好きなのか?」
「えっ…?」
「いつもここに居るじゃないか」
うっすらと笑みを湛えて、風に撫でられるそらいろの髪を押さえながら俺を静かに見据える彼は、
この世の者ではない位に、美しかった。
「俺、風丸」
「…かぜ、まる?」
「うん、そうだ」
俺が鸚鵡返しのように彼の名を呟くと、さも嬉しそうに俺の近くに寄ってきた。大きな瞳は透き通ったブラウンで、今にも引き込まれそう。
「俺、円堂守!
よろしくな、風丸!」
「…あぁ、よろしく」
差し出した手は握られることがなくて、不思議に思って聞いてみれば、
「…俺に触れたいなら、また会おう」
「? 今じゃ駄目なのか?」
「…触れたら俺、消えちゃうから」
そう、儚く笑って
より一層激しく舞い出す花びらの中を駆けていってしまった。
「……また、会いたいな…」
ぽつりと出た一人言に、何か暖かいものが胸を揺るがせた。
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