02
「……離れたくないん、だ」
「…え?」
「風丸くんから…離れたくない…じゃ、駄目かな?」
はじめてみた、悲しそうな笑み。いつも余裕そうに微笑んで、その猫目を細めて俺を貫くヒロトからは信じられないような、笑みだった。
「…ヒロト、それって…」
「………ごめ、ん…俺……」
君を手放せる自信がない。
結局、そのままヒロトは自分の足元に視線を落としてしまって、俺は思わず視線を泳がせた。
ヒロトは、そういう関係だ。
所詮セフレ、お互い利用し合って、欲求不満を解消しあう、愛のない行為の相手。それだけ、俺には円堂がいる、優しい、優しい円堂が。
「…この前、俺、言ったけど……」
「っ、」
『…好きになっちゃった、ら…君は俺から離れる…?』
「君に円堂くんがいるのは知ってるよ、君が俺のこと、好きじゃないこと、くらい」
「…ヒロ、ト…」
「でも、俺には、俺しか知らない風丸君がいる、円堂くんも知らないような、君を」
だから俺は、俺しか知らない君を手放せない
[*prve]
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