光の無い太陽
早朝のランニングは、陸上部の頃からの毎日の日課だ。トレーニングで嫌と言うほど走って、疲れ果てていても、この時間帯に目が覚めてしまう。
息が少し上がる位の、いつまでも走っていられそうなスピードで、町内一周という簡単なルートを、履き慣れたスパイクの靴紐をきつめに縛ってから、軽く体をほぐす為に体操をして、走り出した。
―――――「…鉄塔」
フと、気になった。
いつもなら振り向きもしないのに、彼の特訓場所、鉄塔の前で足を止める。
普通ならいるはず無いのに何故か、円堂が居るんじゃないかと、根拠もなくそう思った。
「……一応、行ってみるか」
居るわけない。
まだ朝の5時
空は白み始めたばかりで、時々寝坊することもある円堂が、こんな朝早くに居るわけないのに。
まだ薄明かり
だけど、近付く度にはっきり見えてくるそれ。
東の太陽を背負って、稲妻町を見つめる横顔が
視界に入ってくる。
ジャージを羽織っていても、まだ春先は寒くて。
歩き出すと、冷たい風が頬を撫でた。
別に気づかれても良いのに、気配を消して近付いてしまう。
「……円堂?」
「うわっ…風丸?」
「なにやってんだよ、こんな朝早くに。
…俺は日課のランニング」
「あ、ああ…いや。
…風丸が、来る気がして」
「…え?」
暗闇に慣れていた目が
朝日にやられて、君の表情(かお)が良く見えないよ。
(光の無い太陽)
俺達、何かで繋がってるよな
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