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    アンドロイドは僕に似ている





みんなはそれぞれ自分の好みのケータイアンドロイドを相棒として連れている。もちろん携帯を持っていない奴もいるから相棒なんて大袈裟に言ってしまったかもしれないが、俺にとってあいつは精神的安定役にもなっているから、いなくなってしまうとゾッとする位の依存力だ。これぞまさに携帯依存症だな。



「また泣いているのか、神童」


「……、」



静かに歩み寄る彼は俺の隣にドサリと腰を下ろして、わざわざ煎れてくれたのかミルク入りの紅茶をくれた。ありがとう、といって受け取ると、彼は深海の様に綺麗な瞳を細めて微笑んだ。



「何があったか聞かないのか?」


「前聞いたら怒っただろ」


「……いまは聞いてほしい」


「ハイハイ、でどうしたんだ、神童?」



彼を選んだのには訳がある。俺が彼と出会った頃は携帯アンドロイドが大変流行っていて、機種もたくさん居た。向こうが俺を気に入り懐かれたこともある。懐かれたと言うのに関すると実はこいつもそうなのだが、俺は数多く並ぶ綺麗に整いすぎた顔の中で、こいつがヤケに気になったのだ。

「俺、な」


「うん?」


「好きな人が出来たんだ」


「…へェ」


「好きだって伝えたいんだけど、伝えたところで叶わないんだ」


「……叶わない?」



わざとらしく彼は聞く。

彼は聞き上手で話し上手が長所、主人に依存し過ぎるのが短所らしい。アンドロイド達は人間と同じように自分の考えを持っていて、性格も人間のようにそれぞれ違う、こいつと同じ顔のアンドロイドはいない。

お前の持ち物になりたい、と真っ直ぐな瞳で、しっとりと濡れた瞳でそう一言だけ言われた。
それが何だか変に心地好くて、そのまま俺は自然と彼の手を握っていた。


そしてだれかを思い出した気がする。



「……俺にお前と会ったより以前の記憶はない、そういう風に造られた。けどな神童、俺お前を見て、はじめて会った気がしなかった」


「……きりの」


「その名前も、初めて呼ばれた気がしないんだ」



緩く眉を下げて悲しそうに、彼は、霧野はそう言った。





『一緒に雷門に行こうな、神童』



「名前で呼ぶなって言ったのも、」


「……きりの、俺の話を、」


「神童お前、何を隠してるのか俺に、教えてくれないか…?」



俺に好きな人が出来た。
でも彼は俺の前から消えたから、想いを伝えるのは叶わない。
だけど俺の好きな人は、また俺の前に現れた。けど似ているだけ、彼は俺の好きな人じゃない。違うと思っているのに。思おうとしているのに。



「…言えない」


「……しんど、」


「お前にだから、言えないんだ」



待ってて欲しい、霧野。
【霧野】を忘れられるまで、俺は誰よりも近くに居るお前に言えないんだ、本当の事。



零れる涙を霧野は指で掬って、【霧野】のように俺を力任せに抱きしめた。












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