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   愛してるのに




※オチな(以下略
※にゃんこ蘭丸がご主人様拓人に恋してます






































ぽかぽかと暖かい日だまりに見を預ければ、彼はクスクス優しく笑って俺の喉元を緩く撫でた。日だまりに反射する俺の大好きな彼の瞳に自分のエメラルドグリーンの瞳が映って、俺は日光浴をやめ彼の腕の中に潜り込む。いつもと同じ、シトラス系の淡い香りに包まれて、俺はホゥ、と息を吐いた。彼が俺に言う。らんまる、今日は天気が良いな。俺はああ、そうだなと返事をして、更に彼の腕に潜り込む。いつも彼はピアノの前に立っているかサッカーボールと戯れているかなのだが今日はそのどちらもせず、いつもなら冷たいピアノの革椅子に身を丸めている時間帯の俺にとって今日は天国のようだ。拓人、と愛しい愛しい主人の名を呼んで顔を見上げる。俺の瞳を見据えて、彼は不思議そうにどうしたんだ、と俺に聞いた。キスしたい、そう俺は呟いた後控えめに、彼のいつもなら冷たい鍵盤の上を軽やかに滑るその細く綺麗な指をぺろりと舐め上げた。どうしたんだ、今日はやけに甘えてるな。いつものこの時間帯は構ってくれないじゃないか、と言おうとしたがやめた。彼は優しいからきっと、俺には劣るのかもしれないが(これはあくまでも俺の願望だから、本当の優先順位はわからない)、百歩譲って同じくらいに大好きな物を俺の為にやめるかもしれないからだ。
甘えん坊、そう拓人が俺の耳元で囁いた。引いテノールが俺の鼓膜に届き体中に響きぶるりと身震いした。彼はずっと俺を抱き抱えてくれていた手を解いて、俺をまた窓際の日だまりへ置いてしまう。まだ腕の中にいたかった、そう言いながら俺は拓人の脚を追い絡み付く。



「…蘭丸、悪いな。これから三国さんとミーティングなんだ、すぐ戻るから」



そう言っていた時の彼の顔はサッカーボールを蹴っている時、ピアノに向き合う時とはまた違う幸せそうな顔で満ちていて、俺は自分の存在と言うのに嫌が応でも気づかされてしまい、よろよろと日だまりに戻り彼の温もりを探した。







あきゅろす。
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