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   君に愛に来た











「俺は何千年も前から、アイツの生まれ変わりを探している」


ポツリ、と彼は呟いた。ザァ、と風が吹いて彼の美しく、柔らかい空色の髪が好き放題に暴れて、直ぐにうなだれる。彼は妖らしい。転校してきただか引っ越して来ただか、彼は突然この街にやってきて、昔のことを本当に体験したかのように話す不思議な奴だった。俺が教えた筈の事もいつの間にか俺が教えられる側に回っているようなその巧な言葉遣いは、何百歳も年上のような、


「あんな奴は滅多に生まれ変わらないんだとさ、だから俺はずっとずっと、あいつの為に、生きてきた。」

「……風丸、」

「やっと会えたよ、瓜二つで驚く半面嬉しくて泣きそうになった」


綺麗に弧を描く、アンドロイドのように整いすぎた唇が紡ぐ言葉が脳内に染み渡る。隠れた左目が透けて見えて、クスクスと笑みながら細められる赤茶の瞳が近付いて来る。蜂蜜色に染まる教室に二人、お互い人待ちで、彼はイキナリそう俺に暴露して、俺を抱きしめた。


「俺が探していたのは円堂さ。あいつの前世は美しくて、妖の間では暗黙の了解で食いはしなかったけど、皆アイツを狙ってた。お前達に出会えるなんて思ってもいなかった、だからはやく伝えたかったんだ、お前以外にも、みんなに」

「か、風丸…何言ってるのさ…あやかし、って何の話?俺は緑川リュウジだ、人違いだよ…しかも、前世って…」

「……思い出してないのか?」


大きな瞳に影を作り、彼はコテンと首を傾げる。お互いの間にある机を鬱陶しく一見して、俺はその机をサイドへとずらした。蜂蜜が時間と共に濃くなり、赤身を帯びて青闇へと飲み込まれていく。風がひゅうひゅうと颶を巻いて、俺の頬を霞めて風丸の髪を撫でた。


「……思い出してくれ、もうあれから生き続けているのは俺だけなんだ。やっと会えた、お前達に、…リュウジ」

「……かぜまる。」


なぜか、何故か、懐かしく感じる時があった。彼は敵として出会って、今こうして仲間として共に過ごしているわけだけど、ずっとずっと、俺は彼の傍にいて、最期まで彼と一緒にいる、いやいた、そんな錯覚。彼の整いすぎた顔を見遣ると、眉を下げてニコリと笑って、近付いて来る気配へ向かって歩き出した。


「じゃあな緑川、また明日」

「……風丸っ」


出会ったあの日から彼を好きだったような錯覚は本物だったみたいで、彼を老いかけて後ろから抱きしめた。







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