俺が大好きな君の髪は俺の大好きな空に似ていた
※オチないよ
散歩してた。
今日の帰り道、バスから見た夕暮れのその先、上から漆黒、街に降りるにつれだんだんと白身を帯びたグレイへと変わって行く空を見て、本能なのか何なのかわからないけど、今日は外に出てもっとこの空を見なくてはいけない気がした。
「どうしたんだ、佐久間?」
「…かぜまる」
「ココ、雷門の方だぞ?河川敷に用事か?」
声を掛けられ振り向くと綺麗な空色の髪。ふわりと夜風に吹かれて、柔らかい彼の髪は宙を舞う。風丸の髪は昼の青空みたいだな、と言うと、…俺の質問の答えになってないな、とクスクス笑われた。
「今日の空、綺麗だから散歩、してた」
「ああ、なるほどな。河川敷では空、広いからな」
そう言って風丸は、重そうなバッグを草原に下ろして、俺の隣に腰掛けた。肩の稲妻マークが夜の薄暗さにやけに目立つ。風丸の存在も、目立つ。
空を見上げる彼の顔は前髪で見えないが、整った唇から端正な顔立ちだと言うのは嫌で理解できた。
「呼ばれてる気がするんだ」
「…空にか?」
「ああ、呼ばれてるって言うか、俺を見ろ、感じろって言われてる気がする、空に」
「……佐久間は空に気に入られたんだな」
佐久間が雨降れって言ったら雨降ったりして、と風丸はまたクスクスと笑った。風丸は今みたいに、俺の話を馬鹿にしないで真剣に聞いてくれるから、好きだ。何言ってるかわからないようなことも彼は全部拾ってくれるのが嬉しくて、俺はやはり風丸に何でも話すようになっていた。
今は何時だろう、荷物を置いて着替えずそのままフラフラとここまで来た俺、少し肌寒い位の風が心地好い。
「…帝国は明日朝練か?」
「?…いや、午後から」
「じゃあ泊まってけよ、俺ん家」
「いいのか?」
「ああ、だって佐久間一人暮らしだろ?寂しいだろうし」
そう言って今度は、今まで控えめにクスクスと笑っていた風丸とは似ても似つかぬ程にニカリと、無邪気な笑みを俺に向けて差し出してきた。
風丸は表情豊かだなと言うと、それがお前に移ると良いんだけどなあとまた彼ははにかんだ。
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