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    霧野×君







映画を観に行こう、そう誘ったのは私だけど、こんないかにも泣けちゃいます、なんて映画を観ようとは思ってなかった、切実に。

女の子だから、彼氏にぐちゃぐちゃの顔見せられない、否、見せたくないでしょう。それに拍車をかけるようにして、私の彼氏は私以上に女顔(そんなこと言ったら怒られちゃうけど)だから、余計に見せたくなかった。でもそんなこと蘭丸に言えるはずもなく、私達はそれぞれ飲み物を持って席に着いてしまった。



案の定映画は開始三十分とかからずに泣ける泣ける…そんなの耐えれる訳がなく、私はホロリといつの間にか流れてきた涙を、蘭丸に見られないように急いで拭った。どうしよう、少しではあるけどお化粧だってしてるのに、取れちゃって目がパンダみたいに…そう思いながらもその映画は私の心を惹きつけ、ココロを奪う、駄目だ、我慢できない。



「…らんまる、?」



不意に、右手をそっと手繰り寄せられた。ふわりと包み込んで、離さない。不思議に思って、暗がりの中蘭丸の顔をばれないようにそっと、覗き込んだ。



(……泣いて、る…?)



ドキリ、と心臓が跳ねる。
その双瞳はスクリーンをじっと見据えたまま瞬きもせずに、ツー…と、一筋の涙を零しながらわずかな光に反射して見えた。泣いてる、蘭丸が、綺麗な睫を震わせて、静かに彼は泣いていた。



(……なんか、やっぱり男の子なの、ね)



頬杖をつく彼の右手にまで及ぶ涙が、誰よりも綺麗に見える。
フワリと、視線に気付いたのか、蘭丸は私と視線を絡ませる。今まで以上に絡められた手が、暖かい。



「…お前も泣くんだな、」


「こっちのセリフ、泣き虫、拓人に言っとくから」


「ハハ、それだけは勘弁」



そう言って、もうすっかりもらい泣きと感動でポロポロと決壊した私の瞳から流れる涙を、彼は自身の涙で濡れた右手で、掬い取る。



「泣いてる姿も潔いのね」


「泣いてる姿も可愛いじゃん」




ぐい、と引き寄せられた右腕、彼の左手と私の右手の指をこれでもかと絡ませて、私たちは結局これでもかって位映画に泣かされることになったの、だ。







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