出会って別れて、また出会う
春は別れの季節
なんて誰が言ったんだろうか。
綺麗に咲き乱れる桜はここにはなく、ザザ、と水の流れる音だけが私を祝福している。
この手には卒業証書、なんてものもない。
目が覚めた私には、仕えていた総帥どころか、一緒に卒業する仲間すらいない。
結局、私だけだったのだろう、あの学校に愛着を沸かせていたのは。
「何してんだ」
「ッ…ふど、う…こそ」
「あんたが見えたから、」
いつかの時のように光のない瞳ではなく、灰色の光さえも陽光として取り込んだ彼の瞳は、私には刺激の強すぎるヒカリだ。直視できなくて、灰色の地面を睨み付ける。
「…ナニ、恋しいのか、小鳥遊ちゃんは」
「…ふざけたこと言わないで」
「まぁ一番慕っていたのは小鳥遊ちゃんだもんなァ、」
「…そんなこともう、忘れた」
「…ふぅん、」
そう言って静かに私の隣に腰を下ろす彼も、かつての母校だった学校の制服を身に纏っていて、深緑と真紅が視界の端で強く、存在感を示していた。
…好きだった、人がいた
紫色に鈍く光り輝くアレが胸に下がっていたときでも、私は私として、彼を真剣に愛してた。
彼の瞳は鈍く光りながらも、時折、直視できないほどに眩しかった。
私みたいな器なんかじゃすぐに呑み込まれていたあの石にまだ、呑み込まれていない彼のあの瞳に恋をした。
逆光で銀色に光る長い髪、褐色の肌に映える同じユニフォームで、隣を走っているのが私の誇りだった。
「…で、まだ忘れられねェのか、小鳥遊ちゃん?」
「ッッ、」
「…、じゃぁ、追いかければ良いんじゃねェの」
「……、そんな簡単に、言わないで」
「じゃぁ、代わりを作ったら良いんじゃねェの?」
「そんな人いない」
「…じゃぁいっそ、」
「、ッちょ、…!」
回る視界
灰色の地面から一気に灰色の空へと回って、そして視界いっぱいに彼の顔。
今の彼の瞳は、私には光が強すぎて直視できないわ。
「俺に乗り換える、とか」
「ッな、にを…」
「寂しくないんじゃねぇかな、俺なら」
真紅の瞳が儚げに揺れて、私の指に絡む絡まる色素の薄い指先を振りほどこうとしたら、今度は腰を持ち上げられてそのまま、抱きしめられる。
「……放、して」
「嫌だね」
アノ人のように、意思を感じる瞳
灰色のヒカリまでも陽光として取り入れて輝く瞳を持つ貴方なら、きっと私は必要ないわ
出会って別れて、また出会う
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