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   みんな退屈してるだろ?



※サッカーやってない
※円堂片想い




綺麗な、それでいて胸を突くような旋律
甘美な声。俺を引き止めて、引き寄せて
階段を上る。禁止のはずの屋上。










『雷門中の七不思議、しってるか?』


『…なんだそれ?』



噂好きの半田が俺にそう聞くから、正直に俺は応える。
七不思議…ね。大して考えたことも無かった。



『うちの学校、屋上禁止だろ?鍵かかっててさ』


『ああ…前マックスと見に行ったら、壊されてた』


『見に行ったのか!?なら話は早い!!
給水塔、あるだろう?』


『ああ』


『あそこに立ったら、屋上に住む謎の転校生に会えるんだってさ』


『転校生?』



ますます意味がわからない。
教室の窓から見える、屋上。確かに給水塔が見える。



『それがさ、その転校生。転校してきたくせに、一度も教室に来た事が無くて屋上に居るんだって』


『ちなみに…男か?』


『それが謎なんだよな!
俺ら今度、屋上探検してくるんだよ』



無邪気に笑う半田に、そうか、給水塔からは落ちるなよ!と、一言。興味は大してわかなかくて。









「…内緒な、俺が歌ってたの」


「…あ、え…っと」


「俺のこと知らないわけ、無いと思うんだけど?」



クスクスと笑う。
はらりと、長い前髪が風に踊る。かき上げた前髪からチラリと見えた色素の薄い瞳から、目が離せなかった。



「俺、お前らの記憶の中で生きたいんだ」


「…え、」


「…理解出来ないか?」



弧を描く口元が解ける気配はない。しっ、と口元に指先をあてた。そしてカツカツと、俺に一歩一歩、確実に近付いて来る。



「俺の存在で、誰も、退屈しないだろ?」



だから、俺はここに居る。
そのときの俺には、それを理解することが出来なかった。


(例えばさ、俺とお前がここで会って)
(お互い好きになる、とかベタだし)





あきゅろす。
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