本能に我慢の日々
「風丸!」
俺を呼ぶ声が聞こえる。
グランドは夕日がオレンジ色に染め上げて、フと、呼ぶ声の主の額に巻かれたバンダナを思い出した。
「…円堂」
「特訓してるのか?
あ、隣良い?」
校舎から走ってきたのか、息を切らして、ニッカリと笑うそいつは、学ランが汚れるのも気にせず、芝生に座る俺の横に腰を下ろす。
色素の薄くて、透明がかった茶色の瞳が儚げに揺れた。
「なぁ、円堂…」
「なんだ?風丸」
くりくりと、目を輝かせて
あどけない笑顔で君は
「…なんでも、ない」
「? そうか?」
そう言って、視線をグランドに戻すその横顔から、目が離せない。
時に近すぎるのは、遠い時よりもずっと遠く感じるもので。
触れたい、今すぐ。
夕日に染まるそいつの頬に手をあてて、無理矢理にこっちを向かせたい。
「帰ろーぜ、風丸!」
「…ああ」
(本能に我慢の日々)
でもそろそろ限界、かもな
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