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綺麗な月に口付けを、






暗闇がずっと怖かった
どこを向いても黒の世界でひとりが、ずっと怖かった。

だから寝るときは電気を煌々と点けたまま寝て、俺が眠りについてから母さんに電気を消してもらっていた。



いつから
いつから俺は、暗闇が平気になったんだっけ。




「風丸、どうした?」


「え?」


「話しかけてんのに、ボーっとしてお前らしくないぞ?」


「あ、ああ…悪い。なんだ?」


「眠れないのかって、聞いたんだけど」



夜、開け放たれたカーテンから月の光で眠れなかった時、そんなことを思い出したのだった。
月の光で眠れないなんて、昔とは間逆だな。
これも大人になった証なのかと、モゾリと円堂の方に身を傾けた。



「カーテン、円堂は閉めないんだな」


「うん?ああ…なんかさ、綺麗じゃん」


「月が?」


「うん、それに、なんか落ち着く」


「…落ち着く?」



そう言うと円堂も俺の方に体を向けて、ニッカリと笑顔を向けた。
解かれた前髪がおでこにかかって、いつもより少し大人びて感じる円堂はまた身を小さく捩じらせて、俺に近づいてきた。



「風丸が小さい頃、夜暗かったら眠れなかったじゃん?」


「…、ああ」


「だから俺、眠れる方法教えってやってさ」


「…そうだったか?」


「風丸忘れたのか!?じゃあ、俺に風丸が言ったことも、忘れちゃった?」


「…すまない、覚えてないな」



俺が少しベッドの端に寄れば、円堂はすかさず俺の方のベッドに潜り込んでくる。
サラリ、と頬から落ちた綺麗な茶髪が俺の手の上に落ちた。
キュ、と握ってみるとくすぐったかったのかその俺の手をやんわりと避けて、今度は俺の頬に手を置く。



「えんど、…ふあっ」


「…こうやってしたら、安心するだろって」


「……あ、」



蘇る記憶、綺麗な、月が見えたアノ日、円堂の丸い瞳に月が反射していて、俺はソレを綺麗だといったんだ。


次々に落ちてくるキスはゆっくりと俺の前髪をかき上げて、触れるくらいのソレを繰り返していく。
心地好い、円堂の体温を感じて、程よい快感に目がとろんと重くなっていく。



「思い出した?」


「…うん、」





『えんどーは太陽みたいだよな』


『じゃあ、かぜまるは月?』


『…おれがつき?』


『だって、きれいだから』




眩しい君に照らされて、君に綺麗といわれる月のようだと言われた俺はあのときとても幸せで、今みたいに、次々と優しく、落ちてくる円堂の口付けに安心できて、




「…だからもう、夜なんか怖くないんだよ」


「…え?」









綺麗な月に口付けを、
  何も怖くないよ、お前が居れば、






――――――


涙雨様THANX!!










あきゅろす。
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