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「おいおい何か小せぇの出てきたぞ」
「フハハ、本当だ。ボクちゃんここは危ないでちゅよ〜」

たちはだる空を、不良たちは盛大にからかった。
身長をコンプレックスに感じている空は『小さい』の言葉にカッと目を見開く。



「蟻んこみたいに小さくて踏み潰しちゃいそうだと!?ゴラァアア!!」


怒った空は巻き舌気味に叫んだ。

いきなり吠えた小さい奴、空に、不良たちも若干ギョッとしたように肩を揺らした。

だがそこは不良。
いくら小さかろうと、歯向かってきたやつに容赦はない。


「あぁん?んだテメェ。やんのかよ」

「あぁ、やるとも」


即答してきた空に、不良Aはニヤリと笑う。
そして空の胸ぐらを掴むと顔を寄せ


「お前弱そうだから先にかかってきていいぞ」


と鼻で笑った。

その言葉に今度は空がニヤリと笑う。


「よし、わかった」


力強く頷いた空に、不良たちは少しだけ違和感を感じた。

自信満々に突っ掛かってくるぐらいだ。
こんなナリをして実は喧嘩が強いのかも知れない、と警戒のため一歩下がる。





「金くれ」




「「…………」」



不良たちは沈黙する。

一体目の前の男がなぜ掌を差し出しているのか、意味がわからなかった。

呆然とする不良たちに構わず、空は続ける。



「100円でいい。マジで。」



「「………」」



不良たちは憐れな目で空を見つめた。


何も言わず百円すらもくれない不良たちに、空は焦れったそうに地団駄を踏むと、港中に響きわたるほどの大声をあげた。


「100円でいいからくれぇええええ!!!」



これではただの駄々っ子だ。


不良たちは困った。

金を巻き上げるつもりで近づいたのに、なぜかお駄賃並の額を逆にせびられているのだから。


それに、ここいらには質の悪い連中も多い。
今の変な叫び声を聞き付けて、面倒な奴がやってきたら厄介だ。



「あ、」

不良たちはそうよむと、お互いにアイコンタクトを交わし合い、走り去った。




居なくなってしまった不良たちに、空は差し出したままの掌を引っ込めて、肩を落とした。


「失敗した…」


「貴様のそれは計算か?」


今まで傍観していた九音は、どう判断したらいいのかわからなかった。
てっきり殴り合いになるかと思えば、空がしたのは意味不明なことを叫んだだけ。

だけど結果、不良たちを追い払うことには成功している。


「計算?なんのことだ」
「今のだ」
「何か間違ってたか?初めてだったからな…」


空は九音に指摘された意味を、小さなオツムで必死に考える。

(100円じゃ少なすぎたか?相場がわからん。ルールも微妙だし…)


空はますます頭を悩ませた。



「初めて?何だ、あれだけ大口叩いておいて一度も(喧嘩)したことないのか」

「あぁ、ただの興味本意だ。俺には(このイベント)向かないかも知れない」

「貴様ってやつは…後先考えないにも程がある」




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