それまで岩陰で機会を窺っていたイザナギは、 剣に導かれるように立ちあがった そして傷だらけの両腕に最後の力を込めると、 オロチにむかって猛然と飛び掛かって行ったのじゃ イザナギの手の中で踊るように翻る金色の剣 その眩い光が煌くたびにオロチの首は次々と宙を舞い ついにこの怪物は自らの血だまりの上に崩れ落ちた 長年村人を苦しめた元凶が最後を迎えた瞬間じゃった 戦いが終わった頃には、辺りはすっかり白んでおった 白野威はオロチの毒が全身に回り息も絶え絶えじゃったが、 イザナギはそんな白野威を抱きかかえ、 村人の待つ村へと帰って行った 村に着く頃には白野威は、自分で動く事も出来なんだ 村人たちが見守る中、村の長老が優しく頭をなでてやると、 白野威はそれに応えるように小さくワンと鳴き……… そして……眠るように事切れたのじゃ …こうして神木村にやっと平穏な日々が訪れた 村人たちは白野威の立派な働きを忘れぬよう、 村の静かな場所に社を建て、そこに白野威の像をまつった そして、イザナギの振るった剣を「月呼」と名付け、 十六夜のほこらに供えて、いつまでも平和を祈り続けたという 永遠に変わらぬ平和な日々を…… ところが、物語はここで終わらんかった 実はこのお話には、誰も知らん続きがある 白野威とイザナギの活躍から、 百年が経とうとする神木村から、 その続きは始まるのじゃ… ≪back [戻る] |