恋桜―こいざくら―
‡ エピローグ ‡<+え>
互いの熱を僅かに感じる様に初々しく繋がれた二人の手元を『恋桜』の残り僅な化身達が祝福するように掠めていく。
叶わなかった二人の想いを慈しむ様に、空と貴文は絡ませていた視線を外しそっと『恋桜』を見上げた。
「先輩…、愛してます」
「…なっ、何度も言うんじゃ…ねぇよ」
照れ臭そうに語尾を下げ、俯いてしまった空の手を指を絡ませて力強く握り締め貴文は春風に流されそうなほど小さな声で囁いた。
誓います…
そんなお熱い二人を遠くから見詰め続ける視線に気付きもせずに…。
それは英の視線だった。
英は知っていたのだ『恋桜の伝説』を…。
しかし、長年傍に居たことが裏目に出てしまった。
傍にいるのは自分だけ…
焦らずとも、いずれ空の恋人になるのは自分なのだ…
伝説に頼らずとも必ず空は自分を選ぶ…
そんな自信が『恋桜の伝説』に頼らせず、そしてまんまと貴文に空を奪われてしまった。
「参ったな…。何やってんだオレ…」
自虐的に溢された笑みを隠すように、そして視界に嫌でも入り込む二人の姿から逃げるように英は背を向けそのばから立ち去る。
「…しゃぁねぇな。最高の親友で居てやるよ…」
…fin…
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