恋桜―こいざくら―
19
「んぁっ!」
「先輩…愛してます…」
あなたしかオレには見えません… 頭上から降り注ぐように囁かれた貴文の告白に、空の灯っていた熱が大きく燃え上がるのを嫌でも気付かされてしまう。
「…内藤」
「クスッ…貴文です」
「………」
オレはどうしちまったんだ… さっきから、胸の辺りがキュンキュン痛いくらいに騒いでる… この腕の中が心地良いとさえ思えてしまう… オレはこいつが好き…なのか?
「…た、貴文…」
うぁっ! 痛てぇ!心臓が痛てぇ… こいつの名前呼んだだけなのに、全力疾走したみてぇに心臓が煩ぇ。
貴文の胸に額を付けたまま、制服を掴む手に力が篭る。
「先輩…」
キュンッ
貴文の声を聴いた瞬間、疼いた胸の痛み。
認めざるを得なかった… 自分が貴文を…『好きだ』と言う事実を。認めさせられてしまった…自分自身の身体に。
ここ数日の空の行動が、すでに貴文に恋をしていた故の変化だということを。
「嬉しいです、先輩。オレの名前呼んでくれた…」
「ち、ちがっ…ううぅ!」
ギュゥっときつく抱きしめて空を自分の腕の中へ引き込みながら、貴文は空の額へ優しいキスの雨を降らせた。
「あっ」
チュッ…チュゥ… 断続的に空の耳を刺激するキスの雨音。
次第にそのキスの雨は、瞼…こめかみ…頬を伝い、そして唇へ辿りつく。
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