恋桜―こいざくら―
18
その呟いた瞬間に開かれた唇に目敏く滑り込ませた舌を一気に奥まで忍ばせる。
逃げるように奥に引っ込んだ空の舌を絡め取る様に、激しく空の口腔を溶かしていった。
「ン・・・はぁっ…んぁ…」
呼吸さえさせて貰えないほど激しい貴文からのキスで、空の思考は完璧にドロップアウトしてしまう。
生まれて初めてのキスを奪われたのも貴文。
優しさを感じてしまったキスも貴文。
そして、熱く激しいディープなキスさえも、貴文…。
間々ならない呼吸に、体中の力が抜け始め、膝が震えだす。
卑猥な水音が、自分自身の口元から漏れ出すものだと把握しただけで、腰が砕けるようだった。
「んっ!…はぁっ」
あまりの息苦しさに、思わず空が貴文の胸元に縋り付いた時、頃合を見計らったように貴文は空の唇を解放したのだ。
「はぁっ、はぁ…」
不足した酸素を一気に取り込もうと、細い肩を大きく上下させて息を整える。
朦朧とした意識の所為で、しがみ付いた貴文の胸の中から逃れることさえ考え付かなかった。
いつしか貴文の腕が空の腰に巻き付かれている事にも気付かず…。
「認めますか?先輩?」
空の耳元を掠れた貴文の声が吐息と共に掠める。
全身をその声音で震わせたことを確認した貴文が、力強く空を抱きしめた。
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