恋桜―こいざくら―
17<+え>
強引で、すぐに自分の空気に染め上げ、予想の付かない行動を起こし、空と会話を合わせ様としない貴文の存在が、どうしてこんなにも自分の中で大きくなっていくのかを理解できずに戸惑う。
「先輩…オレと会ったあの次の日から、オレのこと…事ある毎に見てましたよね」
「何でっ!」
自分自身の気持ちに収拾が付かなくなって、考え込んでいたところに飛び込んできた問い。
いかにも、空が自分を探し求め、目で追っていたと言わんばかりの貴文の言葉に大きな瞳をさらに大きく見開き、固まってしまう。
「オレ、気付いてました。先輩が教室の窓から見ていた事も、移動教室の時に1年の教室の前を通る度にさり気なくオレの教室を覗き込んで言ったことも」
オレも先輩を…ずっと見ていましたから…
クスッっと柔らかに微笑む貴文の口から、それでも無意識に起こしていた自分の行動に気付かれていた事実を伝えられ、空はさすがに動揺を抑えられなくなってしまう。
「…っ」
悔しげに唇をかみ締め、拳に力を込めて言葉を探すが、事実なだけに反論する言葉が見つからない空。
黙り込んで俯いてしまった空の頬に、貴文の熱い手のひらがそっと添えられた。
「っ!!」
ビクリと身体を跳ねさせ、容易く空を捉えてしまう貴文を見上げる。
「認めてください、先輩」
「…な、何をだよ」
「オレを…『好き』になったって」
「だ、誰が!…んっんん…」
先輩が… 甘く痺れるような、切なさの篭る貴文の声音が掠れ、吐息混じりに囁きながら三度空の唇を捕らえた。
「…んっ、う…んん…」
空を襲った、貴文からの三度目のキスは、どのキスよりも激しく陵辱の色を滲ませた深いものだった。
硬く閉ざされた空の唇を熱い舌で撫でると、それに驚いた空が『あっ』っと呟く。
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