恋桜―こいざくら―
16
「先輩?同姓ってそんなにキツイですか?」
「なっ!!」
「……『好き』ってだけじゃ…ダメですか?」
「……っ!!」
「オレは…オレは先輩が好きです。あの時からずっと、オレは相田先輩だけを見てました。……好きになった相手が、たまたま『男だった』ってだけで…オレは恋をしちゃダメですか?」
「…恋…って…」
突然、ヒューっと強めに吹いた春風が二人の間をすり抜けていく。
すり抜けた春風が、貴文の前髪を持ち上げた刹那、露わになった貴文の表情は、苦し気に眉を寄せて歪められ、それでも空を掴んで離さない強さのある視線を送っていた。
「…内藤…」
「貴文です」
チッ いちいち煩せぇ…
虚勢を張り、意地を張り、プライドと理想かざしていた空の戦意を簡単に剥ぎ取ってしまう…そんな、貴文の低くて甘いハスキーボイス。
―そして、絡め取る様に見つめる熱い視線…―
オレは…男だ…男なんだ… そう頑なに自分に言い聞かせているにも拘らず、空の心の奥にはポッっと名づけようの無い熱が灯り始める。
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