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恋桜―こいざくら―
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「……」 
「……な、内藤、お前サボりかよ…授業受けろ」 
 
  静かな屋上での二人の間に、例えようのない沈黙が流れ、息苦しさを感じてしまった『間』を嫌う空が、先に言葉を掛ける。 
  先程から、室外機の裏に佇む二人の周りには、校舎裏に悠々と咲き誇る桜の花弁が春風で吹き上げられ、何枚も降り注いでいた。
  まるで、これから先の二人を演出するかのように……。       
 
「はい。サボりました…って、先輩もでしょ?」   
「わ、悪ぃかよっ」   
「別に悪くないですよ。ってことは…オレも悪くないですよね」  
「っ!」 

 
  相手のサボりを利用して何とか責め上げ、早くここから追い返そうとした空だったが、まんまと墓穴を掘りぐうの音も出ずに口を噤む。   
 
  勘弁してくれ…オレ、何だかこいつ目の前にすると調子狂う… 
 
  ずるずると、室外機に背を預けながらしゃがみ込む空の傍らに、貴文は程よい間隔をあけて静かに座った。 
  密着するわけでもなく、だからと言って大袈裟に遠ざけて座るでもなく、程よい二人の間の距離に胸を撫で下ろす空。   
 
  それこそが貴文の意図するものだとも気付かずに…。    

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あきゅろす。
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