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恋桜―こいざくら―
7<+え>
  自分と同じ…いや、自分が同じ名前をもらった、春の青く澄んだ空を掴み所のないモヤモヤとした気持ちを晴らそうと見上げた時だった。 



 
  ハラリ… と何かが舞い落ちてくる。 
 
  その舞い落ちてくる物は、迷う事なく一直線に空の手元目掛けて落ちてきた。   
 
「花びら?…」 
 
  それは紛れもなく桜の花びらだった。 あの日、“内藤貴文”を儚げに彩っていた『桜の花びら』…。 
 
  は、儚げって! 何であいつが『儚げ』なんだよっ! しかも、あいつを一瞬にしてイメージしちまうなんて! 
 
  手のひらに舞い降りた、一枚の小さな桜の花びらと“内藤貴文”を結びつけた自分の思考を疑い、あの時見た涙と重なって『儚げ』と“内藤貴文”を感じてしまった空は、頭の中に空の許可なく映り込んでくる“内藤貴文”を掻き消すべく、パチパチと頬を叩いて、自分自身を叱咤した。   
 
  ジャリッ… 
 
  …っ!
 
  必死で頬を叩いていると、突然感じた人の気配と、聞こえた足音に身を硬くする。もう一度頬を叩こうとした手の動きを止め、気配を消そうと、息を凝らし様子を伺う。 
  さすがに授業をサボってしまった空が、見回りの先生に見つかるわけには行かなかったのだ。
  今日最後の5時限目をサボった空にとってはとにかく必死だった。 
  しかし、空の努力は泡と消える。   
 
「先輩?相田先輩じゃないですか?」 
 
  あの日以来、耳に染み付いてしまった聞き覚えのある声が頭上から降りてくる。  
 

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あきゅろす。
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