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恋桜―こいざくら―

  しかし、空の睡眠不足はその日だけに止まる事はなかった。 
  すでに、“内藤貴文”絡みで寝不足になってから3日余り。 
  なぜこんなにも自分が“内藤貴文”と言う人間に拘るのか、考え込んでしまう。
  最近では、“内藤貴文”が1年生の中でも、ずば抜けて成績が良いと判明はしていた。 しかも、なぜだか男子にもてる事も…。
  窓際の席から見える校庭に“内藤貴文”を見つけると、無意識に目で追っている自分に気付いて、授業中に大声を出し、先生に資料を一人で取りに行かされてしまったり。いつの間にか、視界に入ってきた“内藤貴文”を目で追う様になってしまっていたのだ。 
  しかし、空のイライラは止まらない。なぜなら、あれ以来“内藤貴文”が空に接触をしてこなかったからだ。それでも   
『それなら、自ら赴いてやろう』
  と、いう気は無いらしい空。 
  それでも、あの涙の理由はさすがに気になって仕方ない。
 
「はぁ…オレ、どうしちまったんだ?」 
 
  頬杖をついて盛大に溜息を漏らす空を見つけると、空かさず英は声を掛けてきた。   
 
「空?どうしちゃった訳?そんな溜息ばかりついて」 
 
  …ばかり? オレ、そんなについてたか?溜息…。 
 
  空が自覚してたのは、たった今盛大に付いた溜息のみ。
  英の問いに、無自覚の溜息を漏らしていたことに気付き、空は音が聞こえそうなほどに、ボッ…と顔を火照らせてしまった。   
 
「何だか空、『恋する乙女』って感じだぜ?」   
「こ、こ、こ、恋っ!!」 
 
  空の慌てっぷりに、英の目が微かに眇められた。 
 
  カマを掛けたつもりなんて無かったのにな…。 マジかよ…。 
 
「ない、ない、ないっ!んな事ある訳ねぇっ!!」 
 
  …しちゃった訳ね、『恋』…。
  英が分かりやすい空の反応に、緩く肩を落としたなど、目に入らない空だった。  
 

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