恋桜―こいざくら―
4
何だかんだと言いながら、長年親友を続けて来ただけあって、英の行動は直ぐに読み取れる。
空が、英の頭を撫でながら覗き込むと、ニヘラッと笑顔を瞬時に作って抱きつく。
…英となら全然平気なんだけどなぁ…。
なぜ、“内藤貴文”に抱きつかれたときはあんなにバクバク心臓が痛いくらいに反応したんだろ…。
あっ、怒りの所為かっ!
空は、結論を導き出したと言うのに、英と“内藤貴文”をいつの間にか比べていた事に思わず動揺する。
しかも冷静なまでに比べていた事に。
「昨日から何だってんだよ、全く…」
「えっ?昨日がどうしたって?」
「…へっ?何?」
気付かないうちに独りゴチていたなんて、空自身がビックリだ。
慌てて、何でもねぇよ…と弁明するも、英は何を勘違いしたのか、
「あ、オレ?オレが昨日ゴミ捨てさせたの怒ってんのか?」
などと、また拗ねて背を向けてしまった。
ったく、手の掛かる親友だ…っとは口には出さなかったが、空は
「違うって、別件で色々あったんだよ昨日は…」と英を慰めるべく再び頭を撫でた。
余計なことを口走ったなど気付きもせずに。
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