同盟-3[芋虫・ウサギ's・猫・ネズミ]
ナイトメアは既に満身創痍だった。
今日は余程興奮しているのか、いつにも増して心の声が大きい。
まるで耳元で大声を聞かされているような、意識しなくとも聞こえてしまう類の声だ。
「うう……」
(吐きそうだ……っ)
―――――――
猫とネズミの喧嘩を聞きつつも動じないアリスは、未だにウサギの耳を撫で続けていた。
もちろん頭の中は「かわいい」一色。
その時ガチャリと扉が開き、ぴょこりと白い耳が現れた。
白ウサギだ。
「アリスっ! 部屋に戻っていたんです……ね゛!」
白ウサギは笑顔のまま固まった。
それもそうだろう。
何より愛するアリスが……
「んなっ何ですか、この雑菌まみれの部屋は……っ」
彼曰わく「雑菌まみれ」の動物に囲まれているのだから。
笑顔から一瞬で顔を歪めて、心底嫌そうに白ウサギは言い放った。
「だから宰相さん! 俺は綺麗好きだって言ってるだろ!」
「お、俺だって綺麗だよっ!」
チェシャ猫も眠りネズミも否定しているが、白ウサギは聞いていない。
ぶつぶつと何事かを考えている。
「……解りました、アリス。 僕がこの部屋を清掃して差し上げます」
「何も解ってないだろ!」
いつも持ち歩く時計を銃に変え、不穏な空気を纏った白ウサギ。
チェシャ猫はアリスを気遣って白ウサギを止めようとしているようだ。
「ていうか宰相さん。アリスの部屋で発砲なんかしたら、アリスに嫌われちゃうぜ?」
「なんですって!?」
ばっとアリスを見た白ウサギは、アリスがそれに頷くのを見て息を詰まらせた。
そしてまた思索に耽っているらしく、ぶつぶつとかなり気色悪い。
(うっ……吐き気が……)
更に気分が悪くなってきたが、この記憶が終わる気配はまだない。
「くっ……ならばこれでどうです!」
ぽぽんと軽い音がして、そこへ現れたのは小さな二足歩行のウサギ。
白ウサギ、ペーター=ホワイトがウサギの姿に変身したのだ。
小さな白ウサギは常より甲高い声でアリスに語りかける。
「アリスっ。そんな汚いウサギより、僕を膝に乗せませんか?」
試行錯誤の結果、白ウサギにしては平和的な解決法に落ち着いたらしい。
だが、これが一番今のアリスに効くかもしれない。
その証拠に、アリスはぴくりと反応を見せる。
かわいいものに対しては、アリスは酷く盲目になるのだった。
続く
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