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同盟-1[芋虫・トカゲ]


会合期間のクローバーの塔。
その執務室の机で、巷で怖れられている夢魔は具合悪そうに突っ伏していた。




「ちょっとナイトメア! 休んでないで書類片付けてよ!」

「うう、私は病弱なんだ……」




だから優しくしてくれ、などと言われても動じない。
ちょっとでも甘い顔をすれば、すぐにつけあがるからだ。
クローバーの国へやってきた頃など何度利用されたか知れない。




「つ、冷たい…! グレイ助けてくれ! アリスが反抗期だ!」

「アリスの反応も当然ですよ。 はい、追加です」




どさっと音を立てて積まれた書類。
薄い紙のはずなのに見上げる程の高さにまで溜まってしまっている。




「……本当に、私でなければいけない書類なのか?」

「あなたの仕事以外は俺が片付けています」

「あんたが片付けないから溜まる一方なの! 領主なんだからしっかりしてよね」




渋々といった様子で机に向かうナイトメアに頷きつつ、私はグレイに手伝いを申し出た。




「グレイ、何か手伝うことない?」

「いや、今はこの案件の打ち合わせが二時間帯後にあるだけだ」

「そうなんだ……」



流石仕事が早いなぁと思いながら、後ろの上司を振り返る。
それに比べて……




「ア、アリス! なんだその目は!」

「何でもない何でもない……」

「や、止めろっ…… 恨み言を考えながら睨むな!」




呪いのようだ……と呟いた声が聞こえたが、まあ苛めるのもこのくらいにしておこう。
視線を戻すと、グレイが苦笑してこちらを見ていた。
少し恥ずかしい。




「あ、打ち合わせが二時間帯後なら少し休憩したら? お茶を用意するわ」

「ああ、ありがとうアリス。 ついでにナイトメア様のも頼むよ」




いそいそと準備に取りかかる。
照れ隠しに休憩に誘ったことは気付かれてるはずだけど、何も言わないグレイには感謝だ。
それに免じてナイトメアの分も入れてあげよう。






 ―――――――






「……そうだ、グレイ!」

「ん? どうした?」




お茶をして一息ついたとき、グレイに言いたい話があったのを思い出した。
グレイならきっと喜ぶ話だ。




「あのね……」

「……ぶっ!」




話す直前にナイトメアが吹き出したが、それも気にならない。
これを話したら、グレイがどんな反応をするかの方が、私にとって気になる事柄なのだ。







  続く




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