Destiny-9
「ナルト!!」
布団から追い出され俺が咄嗟にナルトに触れようとした途端、熱く湯気立てる腕に撥ね除けられた。
「っ…!!」
「触るんじゃねェ‥火傷すんぞ…『…殺したい、…お前ヲ…』」
混ざる二重の音声…
ナルトの声と兵器としての声……
「うぅっ…ッ…━━
見る…なァ、どっか行けッ!『…コイツの最期ヲお前の最期トしてやろうか?』」
「あああああー‥ッ!!いやだ!オレは……まだ……」
「ナルトォ!」
決死としてナルトを抱き締めようと再びすれば目には見えないバリアを張られ俺の行動は阻止された。
「…サスケ、サスケ、…オレ………『……殺…シ‥タ…イ』……こんなになっちまったけど…『…今なら‥痛みも与えず…楽二してアゲラレル…カラ…』…ごめん…。『……殺シテヤル…』…ずっと、…サスケの…『…壊シテ…ヤル…カラ…消えてクレヨ』…恋人…で…いたい…」
「ああ、ずっと恋人だ、俺達は永遠に……」
「……、ご…め‥ん『永遠ハナイ‥破壊スルノミダ…』」
「謝るなよ、…何もお前は悪かねーだろが。
それよりも…聞きたい言葉がある…」
「……ぁ……り…がと」
そう言いながらに
涙溢れる瞳を閉ざすとナルトは一旦静かになった。
バリアも溶けただろうと寄ったが、また弾かれる。今度はさっきよりも強靱とした感じで…
まだ
ナルトは生きている…
「そう…じゃねーよ…礼なんかもいらない……愛してる…だろ?
この、ウスラトンカチが…」
一瞬だけ
笑ったように見えた唇。
次の瞬間
ナルトの胸の傷痕が広がり腹まで達して其処がパカリと開いた。
直ぐさま沢山の触手みたいな配線が顔をだしかと思えば
まるで、それぞれの意思を持つ生き物の如くと弧描き伸び、ナルトの皮膚を喰い破りガサガサと中身を徘徊し『何か』をしだした。
その様子は
バチバチと火花散る音と閃光の先で騒がしくと動き回っているも的確に導線を繋ぎ、残された生身を無機質な物に変えて行くかのように思え……
脳髄にまで侵入して蠢いていたソレを阻止する術は、きっとこいつを開発した奴でさえ出来ないのだと思い知らされる。
言葉も出ずに球面に張られたバリアの至近、向こう側から俺は…ただその様子を見ているだけしか出来ずにいた。
決して目を逸らしてはいけないと言い聞かされたみてーに…
身動きも侭ならず……
瞬きも忘れて……
これが成長する兵器…
意思を持った宿主は
殻を破り
掛け替えのない生物を破壊していった。
俺の
一番大切なナルトを……
無数にも思える数の
伸びた配線達は
引き裂かれたナルトの胸から腹を修復しながら中身へと帰っていった。
すると
至近に張られたバリアも消えた……
これが『ナルト』の死。
部屋に焦げた匂いが充満して行く
やっと
ナルトを抱き締められた……
兵器じゃない
ナルトを……
声も出ずに涙が溢れた
こんなに泣いた事は嘗てないくらいに流れた涙は、ナルトの頬に伝い落ちては余熱で蒸発して行った……
それが何故だか
「泣くなよ」とナルトが宥めてくれてる錯覚さえ起こしていた。
ずっと体温すら感じられなかったナルトが
悠か人間の体温よりも帯びてたとしても
その熱が『ナルトの体温』だと勝手に認識しちまった俺は火傷すら恐れず、傷みすら感じず……冷えていく熱が失せても尚、ナルトを強く抱き締めていた。
どれくらい時が経っただろう。
沸いた疑問は
夕陽に変わっていた窓辺を乾いた目に移した時に解決した。
そして事態を冷静に判断した俺はナルトを薄い掛布で包み、
その侭抱きあげ外に出る。
そして夕焼け雲が流れる空を見上げ大きく息を吸い込んだ。
「ナルトは返す!」
一言、叫ぶと
あの特有の柄を施したヘリが空に数機現れた。やはり想定は当たった…
あっちも予期していた俺達の末路……と言ったところか。
地に降りたヘリから降りてきた人物も思った通り……
「ナルトは死んだが………キュウビは、まだ生きている。」
銀髪の三十路近くの男が合図すると
担架を持ち防護服を着何人かの隊員がナルトの身体を俺の手から離していった。
「……ナルトは生きてるよ。キュウビとなっても…、多分ね。」
俺の肩を気安く叩くと背中を向けて手を振ったナルトの上官、カカシの姿とナルトの乗ったヘリが空から消えるまで、ずっとその場に佇み目を追っていた。
あの男の言った事を
初めて信じたいと思った。
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