Destiny-7
「ただいま」
俺がいつものように帰ってくるとナルトは取り込んだ洗濯物を床に散らし
意識を失っていた。
「おい!!」
咄嗟に抱きかかえて
頬を軽く叩くとナルトは薄らと目蓋を開いた。
「…あ‥…、おかえり…。ごめん、洗濯‥汚しちまった…」
安心した…
ナルトが無事で良かった。
「バーカ、そんなのどうだっていいだろが。
それより…大丈夫か?
布団に運んでやっからもう寝ろよ。」
「……うん、ありがと。」
ダラリと脱力したナルトを抱え布団に寝かせ、側に座って金色の柔髪を指で梳く…
ゆっくりと
「薬、飲んでるのか?」
「…うん、量を減らして飲んだら、このざまんなった。へへッ…ダメだな、オレって。」
「なぁ…」
「何?」
「あの薬は、一体…」
「…………アレはさ、オレの『命』なんだ。オレがオレで居るための、な。」
「…後、どれくらい……持つ?」
「……ちびっと、かな」
「こんなに束になってるのにか?」
「……ごめん。沢山飲まないと…もうダメなんだ。薬が切れてた時の分だけ必要みたい…」
脳に埋め込まれた
ある物質との融合が出来るのはナルトでしか無く……
それが成長し、最終兵器となった。
今まで薬でうまくナルトを保ち、身体の中に蔓延った機械や武器をコントロールしてたが、この薬が切れたら暴走する可能性があり、その後には死が訪れると言う…━━
「…そんときはオレから絶対離れてな!
…じゃねーと、サスケまで……死んじまうから…」
今まで話さなかった事を俺に告げたのは……
僅かな日数しか命が無いとの前提があるからだと切実を飲み込む。
僅かな時間……
ナルトと片時も離れずに居たい…
「食うのに困ってる訳じゃない、…お前と一緒に居たい。僅かな日数くらい生活出来る貯えはある。二人で働いてきたからな…」
布団の上からナルトを抱き締め、俺の願いを告げると背中に回した手指を篭め、小さくナルトが頷いた。
次の日、
昼休みを利用して
ラーメン屋に行き
店主にナルトは具合が悪く暫く働く事が出来ないからバイトを辞めさせると伝え、頭を下げた。
「笑顔で元気になったら二人でラーメン食べにおいで。」と俺にインスタントラーメンを奢ってくれた。
人の温度を感じつつ、ラーメンを味わった……恐らく、二人揃って味わう事は叶わないだろうと心に描き、ナルトの分まで胃に染み渡らせ…
店を出て
午後からの仕事に取り掛かろうと港に向かい仕事場に着くほんの僅かの距離を歩いていた時、空が急に騒がしくなった。
「…まさか!」
悪い予感が走り
そう思った瞬間
大地が大きくと揺れ
地鳴りのような爆発音が小さな港町に響き渡った。
「……!!?…」
着いたばかりの漁港は一瞬にして炎が立ち上ぼり地獄と化していた。
見知った顔が倒れ
青い海が血と煤で染まって行く……━━
「…うっ……酷ェ…、」
荒ましい臭いと
飛び散った臓器や潰れた人の居た堪れない姿に悲しさと同時、何とも言えない物が込み上げ吐きそうになりながら俺以外の生存者が居る事を望みつつも、
逃げ場を求めるかに徘徊していた。
倉庫のような建物の中に、この時間なら綱手が一人居るハズ…
あいつは無事なのか?
身近な生存者を求めて炎燻る建物の中に入ると食堂にいた仲間の遺体の側で座り込み涙を流す綱手がいた。
炎で柱が崩れて来ている。
火の回りが早い…!
此所は危険だ…!
「何してる!早く逃げろ…、ホラ…!」
腕を引き綱手の腰を
持ち上げさせると何を思ったか
突然、綱手が俺を渾身の力で強くドンと押し出した。
よろけて足場を崩し
ドンと尻餅を着くと同時、俺が立って居た場所に綱手が雪崩れ込み綱手の腰辺りに炎で崩れ倒れた柱が落ちてきた。
「……な!!」
綱手が押し出さなければ俺がその柱の餌食となっていた。
立ち上がる間
焼け崩れた柱の束が綱手を炎に包んだ…
「あ!…早くっ…お逃げッ!! 早く―――‥」
「…綱手!」
「早…く‥…、行っといで………愛しい……あの子のとこへ………。……坊や……お前は…生きるんだ……‥」
火に焼かれながらも
生きる希望を俺に託し苦悶さながらに早くと見つめる綱手に頷き
礼を言い伝える事も出来ずな必死さで
炎が上がる最中に聞いた声を脳裏に宿して
俺は走った。
走り続けた……
焼けた町を横流して…生きたくて走った。
ナルトが居る駅舎を目指して……
空に轟音が響きチカッと幾つもの光りが雲間に見えると
多くの戦闘機が海に墜ちた。
それから大きな光りが空に走り唸るような雷同に似た音が響き渡ると突風と言うより嵐のような雨風に見舞われる…
戦闘部隊が一掃されたのは、…一瞬だった。
「ナルトォーー!!」
アイツの仕業だ。
札幌で見た
朱色の翼を思い出した…
炭素の臭いを鼻腔に促し息を切らして
早くナルトに逢いたいと願い、加速して行く……━━
駅は無事だ、
アイツは………
地に多く転がった何か筒に疑問を持つより先にナルトの安否を確認したく駅を住まいとした家の中に入ると
ナルトが倒れ、床へと這っていた。
「ナルトォ!」
「来ん…じゃねぇ…殺すぞ…!」
赤い瞳で俺を睨み
鉄骨の飛翼を背中に広げ、発砲筒と思われる鉄管から煙が漏れ……
「敵だ…敵がやって来たぜ…、殺せる…。やっと……──」
白煙が薄くと立ち上ぼる中
レーダーのように伸びた耳、
唇の端を持ち上げ
クツクツと笑う声……
背中から伸びた配管が九本の尾にも見え
そんなナルトの兵器としての姿が
古来から謂われの在る伝説の妖狐、九尾に思えた…
「なんだ、……もう終わりかァ?
チッ、つまんねーの…」
「…ナル…ト‥お前‥」
「…!!?……サスケ‥、あのさ、オレ‥オレ……」
俺に気がついたのかナルトの口調と表情が変わった…
「何だ?…どうした?」
「…ごめ…んな、オレ敵が来たってわかって直ぐに飛ぼうとしたんだけど…何だか出来なくて……飛べなくて…、だから、攻撃されて…死んじゃったんだ、ラーメン屋のオッサンも…銭湯のおばちゃんも……みんな…──」
悔し涙を流すナルトに屈んで髪に触れようとした途端
朱色の瞳がまた光った
「触んな……!、俺に触ったら‥‥殺すっ!」「殺しちゃダメッ!サスケは殺すな!」
「殺す…足らない……殺したい…」「ダメ…!ダメェエエーーッ!!」「ナルトォー!!」
抱き締めようとした時、ナルトがオレの手を
空を斬るようにして触れずに払った。
「……サスケ、ダメ…今は触っちゃダメ‥、お願い…‥大丈夫だから……薬あるし…だから……、見ないで‥。外に、出てってくんねーか?」
流れる涙が頬に伝うと蒸発するほどに機体は熱し……。
触ったら火傷をするだろうと想定される。
ナルトはオレを守るために兵器になっても
オレを傷つけたくはないという意思を貫いていたのだった。
小さな港町の炎を消したのはナルトの爆風によるものだろう…
あいつは人を殺す兵器を利用して俺との砦だけは守ったんだ…と
焼け爛れた町の空を見上げ、
あと僅かな日数を
ナルトと本当に二人っきりで過ごす事になっちまったこの町で過ごす事に思いを巡らせ
ある決意を胸に抱いていた。
ナルトと一緒に居るために……
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