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焦燥

 調教を終えた後、玄は森の滝で体を洗い流していた。月の下でする調教は新鮮味どころか初体験である。

「調教気持ちよかったです」

 森の崖っぷちで座る玄と私。ふうと、一息をつく玄は大満足ですと言わんばかりの顔をしている。

「よかった」

私は足をブランブランさせ、崖っぷちから見えるわずかな光の景色を見ていた。

「さりなさん。また明日も調教してくださいね」

「そんな調教ばっかしてたら、頭ハゲるわよ。しかも依頼の仕事あるし」

月光蝶がふわりふわり、私たちの前に舞う。
交差する月光蝶と紅光蝶(べっこうちょう)が何処かで見たネオンの光で見た綺麗。

「さっき射精しました」

月光蝶と紅光蝶をぼんやり見ながら、話をする。
発光性のあるチョウチョがここで生息してるなんて神秘的だなあ。

「半人半獣でも射精するのね」

「普通にしますよ」

当たり前だ、と言わんばかりの返答。

「というか、さっきから何を見ているんですか?」

「何って……月光蝶。綺麗だなって」

花火のようで綺麗なチョウチョ。私もチョウチョみたいに羽ばたきたいなあ。未来に羽ばたけ、みたいな。

「月光蝶と紅光蝶、交差するように飛んでいますよね。その蝶、交尾するんですよ」

「えっ……」

「追いかけっこしてますよね。メスは月光蝶でオスは紅光蝶。メスが疲れたら紅光蝶は襲います。人間に例えたら、レイプです……」

彼はきっとこの森で、自然を発見したり、楽しそうな日々を送っているんだろう。それはただの想像にすぎない。

月光蝶と紅光蝶の交尾は、街で見る売春婦と汗塗れの男の何倍も綺麗だと断言する。

ただ、追いかけっこで疲れたメスに交尾をするのは少し無残だけど、オスからのご褒美での交尾でもあるのかな?

「そっかあ……大変だね。でも月光蝶と紅光蝶の交尾って見たことあるの?」

「ありますよ。無残ではありますが綺麗です。食べ尽くしているような感じが可愛いです。興奮を覚えたのは……内緒です」

「もう言っちゃってる。あはは。玄って変なの」

「まあ、変ですか?興奮も本能です。どうかお許しくださいませ」

変に律儀だなあ、どうしてくれようか。
そうだ、気になることも聞いてみようか。

「玄は暇なとき、自然と触れあってるのね」

「はい。そうです。変態ともいえる性癖を持ち合わせるばかりで意外かもしれませんが」

「そんなことない。自然って大事よ」

「ふふ……さりなさんって、面白いです」

調教しつつも、面白いと言うことか。
なんだか、意外な組み合わせ。

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