タンポポの(北伊/ほの甘)
「………………?」
私は、目の前のこの人の行動が理解できないでいた。
今フェリシアーノは、私の家に向かって綿毛のタンポポを吹いている。
それも、両手いっぱいのタンポポを一本一本順番に吹きつけては「あー、またダメだった」とかつぶやいていて。
その上すぐ後ろの私に気づいていないっていう。
……なんなのだろうか。
あれか?
フェリシアーノはそんなに私の家でタンポポ大量栽培したいのか?
「……フェリシアーノ。」
私がそう声をかければ、フェリシアーノはビクッとして振り返る。
「げっ、撫子ちゃんもう帰って来たの?!」
げって何だよ、失礼なやつめ。
そう思いながらも「何してたの?」と聞けば「綿毛吹いてたであります!」と返ってくる。
いや、それは見れば分かるし。
そう思っていれば、フェリシアーノはまた綿毛を吹くのを再開する。
「ふーーっ、……ヴェ…またダメかあ…。」
「ちょ、フェリシアーノ止めて止めて。私の家タンポポだらけになるから!」
フェリシアーノにそう言えば、フェリシアーノは涙目で私を見つめてきた。
「…お願い、撫子ちゃん…もう少しだけ、ダメ?」
フェリシアーノは、私がこの顔に弱いのを知っている。
当然私が断れるはずもなく、「いいよ。」とため息まじりに言えばフェリシアーノは「ありがとー!」と言ってまた綿毛を吹き始めた。
それからどれ位吹いたのだろうか。
もうフェリシアーノが腕に持っている綿毛はだいぶ減っていた。
そしてその時。
「っ、できたあああああー!」
フェリシアーノはそう言うとわーいわーいと喜んでいて。
「……で、結局それは何の為にしてたの?」
「うん!あのさ…」
フェリシアーノは私と目を合わせ、ふにゃっと笑って言った。
「好きな子の家の方向に向かって綿毛のタンポポを一息で吹ければ、その子に好きになってもらえるんだって〜!」
「…………え……。」
なんて少女チックな…。
まあ、フェリシアーノらしいし、結局は何かのおまじないなんだろうけど。
ていうか今
“好きな女の子”って…?
ええええええ?!
状況を理解すればするほど、私の顔に熱が集まってくるのが分かる。
ちょ、ちょっと待って…!
そう思っても、フェリシアーノは私の手を取っていて。
「好きです!俺と付き合って下さい、撫子ちゃん!」
フェリシアーノはそう言うと
私の手の甲にキスをした。
タンポポのおまじない
―――
おまじない、ききました。
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