双方の目に映るのは(日/黒)
菊の妹設定です。菊が病んでます。
その暗闇の中には、ただ撫子の泣き声だけがこだましていた。
その中に、足音が1つ近づいていく。
「撫子、どうしたのですか?」
菊はそう言って、撫子の頭をそっとなでた。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ…!」
撫子はその手を払いのける事も、握り返す事もしない。
ただひたすらに泣き続ける。
「何でこんな事するの、お兄ちゃん…!」
そう言う撫子の両足には鎖が巻いてあって、その先は柱にぐるぐる巻きになっていた。
「もう止めて…。お兄ちゃん、ここから出してっ!」
「撫子…。」
菊はそっと撫子の顎に手を添えて、自分の方を向かせた。
「撫子、貴女がどうしてこんな事をされているのか、分かっていますか?」
「わかん、ない…。」
「それなら、ずっとこのままですね。」
「嫌…、みんなに会いたいよ…!」
「…………。どうして彼らの名を呼ぶのですか?私では…不満だと言うのですか?」
撫子は静かに首を横に振った。
菊はそれを見てクスリと笑った。
「私は貴女を誰にも渡したくないし、渡すつもりもありません。
………それなのに私は、どうして気付かなかったのでしょうか。
あのような獰猛な小童共の中に撫子を放っておいていたなんて、今考えても虫酸が走る。」
撫子はただ菊を虚ろな目で見続けていた。
「撫子を誰にも傷つけられたくないし、誰にも取られたくないです。
私は撫子を誰よりも愛していますし、誰よりも大切にしています。
撫子の為なら何だってしますし撫子の幸せを誰より望んでいますし撫子さえ居れば十分なんです。
…撫子は、違うのですか?」
撫子は一すじ涙を流して、言った。
「私も…同じだよ。」
菊はその涙を指で拭って、目を細めて笑った。
「……では、私とここで永遠の時を過ごしましょうね?」
その女は、ただその男を見つめ続ける。
***双方の目に映るのは***
狂気と絶望。
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