以心伝心(波/甘)
私の彼氏はとてもかっこいい。
そして可愛いくもある。
私は彼が大好き。
彼も私を好きだと言ってくれる。
でも彼はすごくワガママなのだ。
「撫子ー!」
ほら、また私を呼んでいる。
そして私はいつもフェリクスのワガママに振り回される。
……でもね、フェリクス。
「今日はいつものようにはいかないからね!」
そう言いながら歩いてきた私を見たフェリクスは、「まだ何も言ってないし。」と不満げな声を出した。
「でも、のど乾いたー、とか寒いー、とか言うつもりだったでしょ?」
「何やしー、撫子俺の心読めるん?」
目を輝かせながら「以心伝心やしー!」と言っているフェリクスを見て、私はため息をついた。
「…ねえ、フェリクスはどうして私にばっかりワガママ言うの?」
「え?」
フェリクスは予想外の言葉だったのか、驚いたような顔をした。
でも、私はすごく不安でたまらないの。
「フェリクス、最近トーリスにワガママ言わなくなったよね。なのにどうして私にばっかりワガママ言うの?」
フェリクスは、私の事を本当に好きなの?
好きなら、どうして私にばっかりワガママ言うの?
それとも、フェリクスは…
「……フェリクスは、私の事パシリくらいにしか思ってないの?」
声に出して言ったら本当に悲しくなって、涙が出てきた。
そしたら、フェリクスに「泣くなし。」と言われた。
「でも、フェリクスがっ…。」
「撫子。」
名前を呼ばれて顔を上げたら、予想外にフェリクスの顔が近くにあって、ちょっとドキドキした。
フェリクスはちょっと真面目な顔で言った。
「……俺がワガママ言うのは撫子が好きだからだし。」
それからフェリクスにぎゅっと抱きしめられた。
それで私がそっとフェリクスの背中に手を回したら、さらに強く抱きしめられた。
「フェリクス……好きだからワガママ言うのって、普通女の子がするものだよ?」
私がそう言うと、フェリクスは私の肩に顎を乗せてきた。
「それなら撫子も俺にワガママ言うし。てか言えし。」
「フェリクス…。」
「俺だって、撫子がちっとも甘えたりワガママ言ったりしてくれんから、不安だったんよ。」
フェリクスがすごく可愛いく思えて、頭をなでてあげながら「ごめんね?」と言うとフェリクスは、「撫子はもっと俺を頼るべきだし。」と私の耳元で言った。
「それじゃあ、フェリクス。」
「んー?」
「もう少し……このままでいさせて?」
「…………それ俺も言おうと思ってたし。」
そう言って私の頬に触れたフェリクスの唇は、とても温かった。
***以心伝心***
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