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それじゃあ後少しと、アオイは笑う。



乱暴で自分勝手でどこかこわいアオイさん。

優しくてでも消えそうで、風のようなアオイさん。



「……ん…っ」



心を失いかけて、記憶を食い尽くされて、まるで別人のようだけれど。


「っ…は…」

「息の仕方下手くそ」

「〜〜っ」


どちらも彼自身なのだとわかったのです。


綺麗事ばかり見ているから、本当に大切なものを失いかけて。

でもそのたび、助けてくれて。

「………アオイさん…」

「なに」

「ずっと、ずっと好きでした…」


言いたくなる、何度でも。

身勝手な想いでも伝えたくなる、伝えずにはいられない。


恥ずかしさよりも、アオイさんに気持ちを打ち明けられる喜びの方が勝っていた。


「…馬鹿だなお前は」



アオイは少し困ったように笑う。

本当は自分から伝えようと思ったのに、言われてしまっては、上手く反応が返せない。

そうやって余裕を奪われてしまうんだ、その純粋な琥珀の瞳に。


「俺だって負けてないからな」

「………?」


アオイも少し顔に血が上っていくのを感じた。

ダメだ、ストレートにこられると案外自分の方がもたないのかもしれないと。


「あ、あの……」


恐る恐る口を挟むチアキ。

アオイの発言の意味をちゃんとにとらえられなかったのか、少し反応を伺うように顔を覗き込む。


「……」

「…アオイさん?」

「なぁ、チアキ。」

「はい」

「さん付けやめろよいい加減。名前だけで充分だ」

「…」


チアキはしばらく戸惑ってしまったが、アオイの真剣な眼差しに、首を縦に頷かせた。


「アオ…イ」

「なに?」




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あきゅろす。
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