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「ふぅ…」


ランプをこっそり借りてくればよかったのかな。


チアキは寒い北風が走る夜に薄着のまま雑草の間を掻き分けて探し続けていた。

小さな翡翠の石を。


アオイがキョロキョロと探していた様子から察するに大切な御守りか何かだとチアキは結論を出した。


大切なものをこれ以上アオイさんが失わなくても済むように。


チアキは聞き慣れない虫の音や、暗闇に体を震わせながらも懸命に探し続けた。


探す範囲はとても大きい。


それでも、見つけなくてはいけない。



眠い体にかつを入れてまた少し横を探し始める。



きっとどこかにあるはずなんだ。


大切なものなんだ。






するとふと施設の入り口である門の所に鈴の音を響かせる人影に気づく。



しかし思ったよりも小柄で自分よりも小さい人影だった。

徐々にチアキの元へと近づいてくる。




不思議と恐怖はなかった。



「……お姉さんこんばんは」

「…こ、んばんは」


声色的に持ち主はまだ幼い少年なんだとわかった。


少年は大きな帽子の飾りには銀色の鎖が架かっていて、風が吹けばそれは身をぶつけ合って風鈴の様な音を奏でる。


チアキはつい見惚れてしまった。


「……お姉さんさっきからなにやっているの?」

「探しものを…ちょっと…」

「こんな暗闇で明かりもなしに?」


少年は疑問の色を浮かべチアキに首を傾げた。

チアキはなんて言えばいいのか言葉を選べず苦笑いしかできなかった。



「僕も手伝おうか?」

「あ、大丈夫です。寒いし貴方は帰った方がいいと思いますよ?」

「……いや、一人で探すよりも二人の方が早いに決まってるよ、やっぱり僕も手伝う!ね、いいでしょ?」


チアキは断り辛くてつい首を縦に頷かせてしまった。


了解を得た少年は洗練された魔道具(魔法を発動させる媒体)の杖を大地に対し垂直に立てると、輝きを放つ星に向かって杖の宝石を翳した。


すると星の輝きを得た杖は光を放ち、ランプのかわりを果たすようになった。


「綺麗…!」

「これなら見えるでしょ?」

少年はチアキの驚き感動している様子を見て嬉しそうに微笑んだ。


光で照らされた少年の顔は本当に幼かった。


しかし何故だろう。


心強い存在に思えてチアキは気持ちが軽くなった。


これなら絶対に見つけられるはずだ。


光を頼りにチアキはまた端から草木を掻き分け探索を再開させた。



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