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「お前、こんなガラクタ程度のものしか買って来れないのか?」

「ごめん…なさ」

「ふざけんなっ!!」



――――バシンッ!!


アオイに今日何度目かの暴力が降り注ぐ。


といっても今は頬を強く叩かれただけで済んだのでまだましな方だった。


それでもやはり、痛いものは痛い。
痛みは引くこともなく、頬は赤く染まっていく。


アオイの冷やかな目は空気を重く変えた。

チアキの姿を見るその目付きは本当に別人のように冷めきっていて背筋を凍らせるようなものでもあった。

ガチガチ震えながらも、何とかチアキはか細い謝罪の言葉を紡いだ。


「…ごめんなさ…い…」

だが本当の所彼女が謝る必要は無かった。


気紛れに買い物に付き合ったジールは唯一その理由を知っている。
そして彼女に非は全くもって無い事も本当は知っていた。



チアキの存在は街の者から見れば忌むべきものとされていた事がまずまずの理由である。

街の半分を未知なる力により半壊させられ、多くの財産と家族を失った街の生存者達は何とか食料や寝床を確保出来たのだが、精神的にはもう細々として病みきっていた。

だからちゃんとした根拠も確証も無い筈なのに、誰かのせいにしなければ、憎しみがなければ精神的にも生きては生けなかったのだ。

そしてその標的にもっとも相応しい立ち位置にいた人物が余所者であるチアキの存在であった。

災いを呼んだ者と口々に語られたチアキは物を買うこと以前に、街の中を歩く事さえ困難であった。

罵声にあい、泥や石を投げ付けられ、居場所をとられていく。

チアキにはこの歪で使えないと言われた物を購入するのがやっとであった。

だから決してチアキが無能なのでは無かった。

だが、チアキは謝るだけで、その理由を決して口に出さなかった。

土下座をするチアキを無言でアオイは見つめ、暫くすると視線の圧力を抑え、肩を落とした。

「ふん、…まぁいい。今はそれどこじゃねぇしな」


アオイは困ったようにわざとらしく首を傾げる。
チアキはすぐにそれを察し、口を開いた。


「なにか…探している…のですか?」

「ああ、小さな翡翠に光る石を落としちまってな…」

「あの……!
私がっ探しておきます…!」

「……は?」


チアキは目を輝かせて、アオイに自ら名乗り出た。


「私がアオイさんの大切にしている石を探します…!」

「…正気か?」


きっとこれで役に立つとわかって貰えれば…

チアキはドキドキ心臓を鳴らせながら答えを待った。

アオイは暫く天井を見て考えたのち、溜め息をつく。


「…わかった、てめぇに任せてやるよ。頼んだぞチビ」

「わ…わかりました…!で、でも…」

「なんだ」

「どこ辺りに落としたかはわかりますか…?」


「………この施設の周り。外か中かはわからねえな。じゃ、任せたぞ」



アオイはすたすたと素っ気なくチアキを廊下に残したまま去っていった。


空の色はすっかり暗闇に染まりつつあった。

それでも引き下がるわけにはいかなかった。

アオイさんにわかってもらいたい。


チアキにはその思いがあるから。



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あきゅろす。
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