16
「……」
ジールにはわからなかった。
何故、そんなにもアオイのためなんかに必死になれるのか。
アオイにちらりと視線を傾ける。
「……」
アオイは平然としていて、かったるそうに次の目的地に向かっている。
「……」
彼はまだ心の痛みを感じているのだろうか。
良心はあとどのくらいしか残っていないのだろうか。
目に見えないのは怖い、と改めて思った。
「心配か?」
「ん?」
「あの女のことがそんなに心配なのか?」
「さぁ、自分でもさっぱり」
「ふぅん……」
全て見透かすような瞳でじろじろ見られる。
正直生きた心地がしない。
アオイはにやりと口元をあげると、また前を向いて口を黙らせた。
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