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「おい、何ちんたらしていやがる役立たず」

「ごめんなさい……」


チアキは重たい荷物を引きずりながら言われた場所になんとかやってきた。

空腹で力もそれほどないのに、また口を開けば殴られてしまうだけなので、黙って言われたことをこなすようにつとめた。


結局昨日は眠れなかったのだ。
自分の見えてきた世界が昨日の出来事でさらに音をたてて割れていくのを感じた。


守ってくれるものはない。


助けてくれるものはない。



ただ自分はお荷物として彼にしがみつくしかないのだ。


それならいっそ、諦めた方がいいのかもしれない。




でも――…






ジールは少し浮かない顔をしてそこに現れた。


アオイがこれからこの街を出て港へ向かうと聞いて施設から飛び出して追いかけてきたらしい。


「俺も、ご一緒いいかな?」

「……っは、勝手にしろ…」

「………」



チアキは黙ったままだった。


まだ、ジールさんは昨日のことを怒っているのかな、と不安そうに見ていただけだった。


しかも、ジールはわざとチアキのことなど眼中にないと言っているように視線を向けようとはしない。


わかっていたつもりだけど、やはりチアキはそれとなく傷ついた。


「おい、なにぼけっとしてんだ?行くぞチビ」


アオイに呼ばれてはっとなる。


慌てて、空いた距離を縮ませようと荷物を持ち上げながら急いだ。



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