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「ふぅん、俺も守備範囲が広くなったもんだな…こんな未発達な餓鬼買ってどうするつもりだったんだか。おい、聞いてるのか?ちび女」


ぐっと腕を引っ張られた。全く手加減されていないせいで、痛みが走る。

これは確かにアオイさんなのに、知らないアオイさんが目の前にいる。

怖くて、泣きそうで、逃げたい気持ちでいっぱいだ。



しかし、彼は手を離すどころか容赦ない言葉で彼女の心をねじ伏せていく。


「…アオ…イさん…っ」

「何その期待していましたって面。何、俺がお前なんかを構うわけがねぇだろ?それとも何、まだ信じられない感じ?」


彼は自分の事をどこかで買ったお買い物にしか見ていないようだ。

「おい、聞いてんのかよ…っ!」

「………!」


手首を思いっきり握られ激痛に顔をゆがませ、一方では自分の体を支える足ががくがくと震えていた。



アオイは別人になったのだとようやく理解が追いついた。


とても危険な人間に堕ちている。


また、自分のことを覚えていないのにも衝撃を覚えた。


「アオイ―。そろそろ手離してあげなよ」


いつの間にかジールは壁に寄りかかっていて、アオイに制止の言葉をかける。




「なんだ、ジール。てめえのモノだったのか?」

「んー…それは違うけど、その子かわいそうじゃん?今にも泣きそうになってるしさ〜。ああ、別に俺はいいんだけど、アオイはどうせうざったくなってすぐ暴力ふるちゃうでしょ?それは今ここではやめた方がいいと思うな」

「…まぁいいか。ほら、これでいいだろ?」


かったるそうに、手を離した。

アオイは怖がり、体を震わせているチアキに鼻で笑いながら病院内に入って行った。


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