9
「ふぅん、俺も守備範囲が広くなったもんだな…こんな未発達な餓鬼買ってどうするつもりだったんだか。おい、聞いてるのか?ちび女」
ぐっと腕を引っ張られた。全く手加減されていないせいで、痛みが走る。
これは確かにアオイさんなのに、知らないアオイさんが目の前にいる。
怖くて、泣きそうで、逃げたい気持ちでいっぱいだ。
しかし、彼は手を離すどころか容赦ない言葉で彼女の心をねじ伏せていく。
「…アオ…イさん…っ」
「何その期待していましたって面。何、俺がお前なんかを構うわけがねぇだろ?それとも何、まだ信じられない感じ?」
彼は自分の事をどこかで買ったお買い物にしか見ていないようだ。
「おい、聞いてんのかよ…っ!」
「………!」
手首を思いっきり握られ激痛に顔をゆがませ、一方では自分の体を支える足ががくがくと震えていた。
アオイは別人になったのだとようやく理解が追いついた。
とても危険な人間に堕ちている。
また、自分のことを覚えていないのにも衝撃を覚えた。
「アオイ―。そろそろ手離してあげなよ」
いつの間にかジールは壁に寄りかかっていて、アオイに制止の言葉をかける。
「なんだ、ジール。てめえのモノだったのか?」
「んー…それは違うけど、その子かわいそうじゃん?今にも泣きそうになってるしさ〜。ああ、別に俺はいいんだけど、アオイはどうせうざったくなってすぐ暴力ふるちゃうでしょ?それは今ここではやめた方がいいと思うな」
「…まぁいいか。ほら、これでいいだろ?」
かったるそうに、手を離した。
アオイは怖がり、体を震わせているチアキに鼻で笑いながら病院内に入って行った。
[*前][次#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!